神学的視点から市場経済を考察 H・コックス教授がICUで講演 2016年7月16日

 米国の神学者、宗教社会学者のハーヴィ・ガラガー・コックス・ジュニア氏(ハーバード大学神学校教授=写真)が5月6日、国際基督教大学(ICU、東京都三鷹市)で「金の子牛と神格化された市場──グローバル消費者資本主義への神学的視座」と題して講演した。同大学キリスト教と文化研究所が主催した。

 同氏はまず、市場経済は市場社会へ、そして市場文化へと移行し、現代では〈市場宗教〉とでも呼ぶべきものへと変貌を遂げており、「今や我々の価値の中心となっている」と指摘。現在の市場は、①人間がどのように生きるべきかを教え、②人生の意味や目的を明確に示し、③クリスマスや母の日などの記念日を、経済行動を活性化させるために取り込むことで資本主義を崇拝する〈礼拝の儀式〉を行い、④銀行や証券取引所といった、市場活動を適切に機能させ秩序立てるための〈神殿〉たる中枢機関を備えるなどの特徴を備えた、充分に宗教的と見なしうる存在となっていると述べた。

 「そうした市場こそ、我々にとって何が最善で、真に欲するものは何であるかを最もよく知るものであるとされており、ときに未来のことすら把握し、もはや全知にして偏在する何かであるとすら感じられるようになってきている。その結果、大文字で始まる〝Market〟が、我々の結婚の条件や子どもの数に至るまで裁可を下すようになっている」

 ここで神学的な関心の対象となるのは、人間の欲望という課題であり、キリスト教において欲望それ自体は悪ではないが、それが不適切な目的に向けられるときに問題となり、神によって与えられた欲望を浪費することになると強調。「いわば欲望が乱されていることになり、人間と社会を歪めてしまう」との考えを示した。

 その上で、市場経済それ自体は善でも悪でもないが、市場はそれを取り巻く家族や国家といった共同体や宗教的伝統によって育まれたにもかかわらず、それらの母体が力を弱めるにつれて、今や不適切なほど強大な存在となってしまったと指摘。「社会のしもべとしての適切な地位に戻すことが望ましい」と主張した。

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