中東の現状知り「戦争反対」の声を 聖公会のG・コプティ氏が難民支援語る 2016年8月13日

 テロ攻撃が横行し、難民が続出するなど、混迷を極める中東情勢。中東の教会が難民救済をどのように進めているかを知り、日本の教会にできることを考えようと、日本キリスト教連合会(植松誠委員長)は7月16日、日本聖公会聖アンデレ教会(東京都港区)で「パレスチナ・中東情勢と教会の働き」と題する講演会を開催した。日本聖公会東京教区の正義と平和協議会、信仰と生活委員会、人権委員会が共催し、75人が参加した。

 講師として招かれたのは、ジョージ・コプティ氏(エルサレムおよび中東聖公会エルサレム教区ヨルダン聖パウロ教会牧師)=写真。通訳をサイモン・クレイ氏(日本聖公会練馬聖ガブリエル教会信徒)が務めた。

 同教区はパレスチナ、ヨルダン、イスラエル、シリア、レバノンの5カ国にまたがり、27の教会、30人の司祭、35の施設を抱えている。ヨルダンのアンマンにある聖パウロ教会は、1940年代後半に家庭教会として始まり、89年に会堂が建堂された。

 同教会で難民支援に取り組んでいるコプティ氏は、現在の難民問題が2003年のイラク戦争に端を発し、多くの難民がイラクからヨルダン、シリアに亡命したと説明。また、2011年から中東・北アフリカ諸国で本格化した民主化運動「アラブの春」は、「西洋の国々が自らの民主主義を無理やり与えようとした」ものだと主張。「今のシリアの戦争、イエメンの戦争などは西洋の国々の間の戦争である」「中東の国々では権力者が権力を失い、権力者がいない国々で過激派組織が自然に出てきた」とし、戦争により亡命を求める人々が増え、欧州の難民問題が始まったと解説した。

 水などの資源が乏しく、経済的にも豊かでないヨルダン。150万人以上の難民が流入し、インフラへの大きな負担を抱えている。また、難民を含む多くの人々が中東から米国、オーストラリアなどに亡命していくことでキリスト者の人口が減少し、「中東のキリスト者の役割は平和を作ることだが、その役割が果たせなくなってきている」と述べた。

 そうした状況の中で、聖パウロ教会が難民救済に取り組む理由は、「そうするように聖書に書いてあるから」だという。「マタイ福音書25章35節は、他人を自分の家族の中に受け入れてもてなすという意味がある。だから難民の人々を助けなければいけないと信じている」。

 コプティ氏自身がパレスチナからの難民であることも理由の一つ。シリア出身の妻も女性や子どもを中心にシリアからの難民のために働いており、夫婦にとって難民支援は当たり前のことだと話した。聖パウロ教会の信徒たちも難民を教会の一員として受け入れる姿勢だという。

 アンマンはヨルダンの中でも最も貧しい地域の一つだが、家賃などが安いため難民が多く、キリスト者の割合も多い。アンマンにある11の教会の多くが宿泊施設を提供しており、コプティ氏は各教会を訪問して難民のニーズを調べ、聖パウロ教会の活動に取り入れている。その中にはムスリムや「エジーデ」(Ezeede)と呼ばれる少数民族もいるが、彼らをキリスト者にすることが目的ではないと同氏は語る。「とにかく助けを求めている人を助けなければいけない。宗教は関係ない」。

 聖パウロ教会は財政的に貧しく、エルサレム教区のスヘイル・ダワーニ主教などから金銭的援助を受けて活動している。

 同教会では食糧を直接配布せず、近所のスーパーと提携してクーポンを配布し、自分に必要なものを自由に選んでもらう方法をとっている。

 他にも、トラウマを受けた女性のためのカウンセラーを招いた研修会や、カウンセラーになるためのトレーニングなども実施している。その根底には、「家庭の健康のためには女性や子どもが健康でなければ」という考え方がある。同時に、日曜学校や礼拝にも参加してもらい、難民も「普通の一員」として教会に参加できるような仕組みを作るよう心掛けているという。

 「苦労している難民の方々のためにまずは祈ってほしい」と日本の教会に対して呼び掛けたコプティ氏。「今の中東、特にシリアの現状を全体的に理解してほしい」と述べ、報道されている内容と実際の状況が異なっている場合があることに注意し、全体的な理解を持つように努力することを勧めた。

 さらに、今後は女性の就業支援を行う専門学校や、医療サービスを提供するクリニックを作りたいと話し、金銭的支援を要請。最後に、一般市民にできることは「戦争反対」の声を上げていくことだと訴えた。

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