非軍事による紛争解決、平和構築へ M・ダンカン氏「非暴力平和隊」活動報告 2016年8月13日

 暴力・軍事力によらない紛争の解決を促進することを目指す国際NGO非暴力平和隊(NP、国際事務局=ベルギー・ブリュッセル)の創設者メル・ダンカン氏=写真=を迎えたシンポジウム「非軍事による平和構築の最前線──南スーダン、シリアでのNGO活動、カトリック教会の自己改革」が7月3日、明治学院大学(東京都港区)で開催された。同大学国際平和研究所(PRIME)と非暴力平和隊・日本(NPJ)が共催、日本カトリック正義と平和協議会が後援し、50人が参加した。

 米アイオワ州出身のダンカン氏は1999年、オランダ・ハーグで開催された「ハーグ平和市民会議」に参加し、平和活動家のデビッド・ハートソー氏と共にNPの設立を構想。2002年にインドで発足したNPは、地元の非暴力・平和団体や人権活動家から要請を受けた場合に紛争地に国際チームを派遣し、地域紛争が非暴力的に地元の人によって解決できるよう支援することを目的としている。03年からスリランカで、07年からはフィリピンのミンダナオで活動を開始。現在は、南スーダンとシリアで活動を展開している。NPは、世界の平和・非暴力NGOが参画し、メンバー団体になることで組織されており、現在69団体が加盟している。

 今回のシンポジウムは、非軍事による平和構築の可能性を追求するNGO活動とカトリック教会の動きに着目し、日本国憲法の平和主義のもとで、どれほど大きな非軍事の国際貢献ができるかを考えようというもの。高原孝生氏(PRIME所長)の司会のもと、ダンカン氏が基調報告を行い、山崎龍明氏(浄土真宗本願寺派法善寺住職、世界宗教者平和会議=WCRP=理事)と君島東彦氏(NPJ共同代表、立命館大学国際関係学部教授)が応答した。

 ダンカン氏は、「日本はこれ以上に武装する必要はない。いかなる国家も軍拡をする必要はない。そのようなことをしなくても、世界の安全保障において役割を果たすことができる」と述べ、「憲法9条にいかなる変更を加えることも必要ない。憲法9条は世界中に広められるべきだ」と力説した。

 その上で、「非武装市民保護」は直接的に市民を守ることであり、暴力を予防し抑止することであるとし、NPのアプローチは紛争主体との対話、関係構築、相互理解に基づくものだと説明。地元の人々が自ら紛争を解決し、生存し続けることが大事だと語った。

 南スーダンでの活動を例に挙げ、難民の女性たちを武装勢力の攻撃から守ることができたのは武器を持っていなかったからだと強調。また、紛争の結果家族と分離されてしまった子どもたちを保護することにより、兵士や性奴隷として利用されることを防ぐことができると主張。7月に国連安全保障理事会の議長国を務めた日本に対して、「非武装市民保護」を推進するよう求めた。

 昨年から活動を始めたというシリアでは、地元の団体と協力して、15の市民保護と抑止力プロジェクトを展開しており、「重要なのは、自分たちが学んだことを他の団体と広く共有すること。反政府、政府側、中立のすべての団体に新しい知識の共有をお願いしている。それにより未来のシリアの希望が築かれることを願っている」と話した。

 ダンカン氏は、今年4月11~13日にバチカンで行われた、教皇庁正義と平和評議会とNGOパックス・クリスティ共催の「非暴力と正義の平和──カトリックの理解と献身」という会議に参加した。同会議が採択したアピールは、イエスの教えの中心にある戦争否定と非暴力を再確認し、「正しい戦争」(正戦論)を否定。「日本国憲法9条をまもるための努力」にも言及している。

 「憲法9条は世界の灯。これをまもるだけでなく、輸出すべき。今の時代、世界の模範となりうる」と語ったダンカン氏。「非暴力の未来でなければ未来はない」と結んだ。

 「カトリック教会の自己改革が具体的な活動の中でどのように行われているか」という会場からの質問に対して同氏は、南スーダンでカトリック教会の司教が戦争の終結を求める書簡を出したことに触れ、「紛争解決のために非常に重要」と評価。「カトリック教会には間接的な支援を期待している」と述べた。

 コメントの中で山崎氏は「非暴力に立つことは難しいことだが、実に尊く有効な力を発揮する」、君島氏は「安保法に反対するならば、では何をするかが問われる。自衛隊の役割を拡大するのではなく、非暴力平和隊のような活動を試みていくことが、安保法制反対とセットになることだと思う」と意見を述べた。

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