「平和を作り出す人」として生きる 安海和宣氏がインドネシアと米国での体験語る 2016年9月10日

 「平和を作り出す人でありたい――戦争の被害者・加害者。ふたつの視点で今を見る」と題して、第43回「許すな!靖国国営化8・15東京集会」が8月15日、在日本韓国YMCAアジア青少年センター(東京都千代田区)で開催された。同集会実行委員会(星出卓也代表)の主催、日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会、東京地方バプテスト教会連合社会委員会の後援で行われ、100人が参加した。

 講師を務めたのは、「特定秘密保護法に反対する牧師の会」共同代表の安海和宣氏(単立・東京めぐみ教会牧師)=写真。同氏はインドネシアに生まれ、15歳の時に日本に帰国して大学を卒業。米国留学中の2001年に同時多発テロに遭遇した。戦争の被害国インドネシアでの体験と、戦争の加害国米国での体験を交えながら、日本の置かれている状況について分析した。

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 同氏は、「違いを乗り越えた、人間の根本の価値である『一緒に喜ぶ』こと、『いたわり合う』こと、『受け入れ合う』こと、『助け合う』こと、これこそが本当の豊かな社会、人々の集まりなのではないだろうか」と述べ、一方今日の日本社会では「排除」「切り捨て」が当たり前になされているとし、「本来の社会のあり方と言えるのか」と疑問を呈した。

 日本に侵略された歴史を持つインドネシアで生まれ育った同氏は、数々の思い出の中でも「今この日本に生きる者として心に響くことは、日本軍によって支配され、苦しみを受けた人々との出会い、触れ合い」だと語った。

 同氏が住んでいた西カリマンタン州の州都ポンティアナックでは、1943~44年の「ポンティアナック事件」で、2千人~2万人の人々が日本軍によって殺されたとされている。マンドールという場所には、日本軍の残虐な行為を描いたレリーフが設置され、中央には「あなたが侵略支配の出来事を覚えるだけでは不十分です。私が願うのは、あなたがあらゆる努力をして、いかなる侵略支配にも立ち向かっていくことです」という文章が刻まれている。

 そこに日本人に対する恨みが刻まれていないことに同氏は驚いたと話し、そこで毎年州知事らによって行われている集会においても「悪に支配される人はここまで残虐になることができる。そのようなことを二度と起こしてはならない」という誓いが込められていることを指摘。「一人ひとりの悲しみや痛み、憎しみが確かにある。そこから目をそらすことなく、理解し続けていく、受け入れ合い続けていく。そこに友情が芽生えていく。このような民間レベルでの平和外交が71年間、世界中で築き上げられてきた」と述べ、「しかし今、それが崩されようとしている」と警鐘を鳴らした。

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 01年の米国同時多発テロの際にシカゴの神学校で学んでいた同氏は、街の電光掲示板などが〝God Bless America(神の祝福が米国にあるように)〟という言葉で飾られるのを目の当たりにし、「世界を揺るがす悪は排除されなければならない。そのためには武力もやむなし」という声が当たり前になっていくのを感じたという。

 神学校の中も同様であり、ディスカッションの中で同氏が「汝の敵を愛せよ」「迫害する者のために祈れ」という聖書の言葉をどのように受け止めているのか疑問を投げ掛けても、「日本人には米国人の気持ちは理解できない」と一蹴されたと話した。「聖書と現実の世界が切り離されて、矛盾を感じない。そのような信仰者の姿を目の当たりにした」。

 やがて戦争へと突入していく米国の姿と、現在の日本の状況を照らし合わせ、「メディアの沈黙」「危機感の煽情」「愛国心の喚起」「権力の乱用」「レッテル貼り」といった類似点を指摘し、「信仰者として大きな戦いの時代に突入していくのではないか」と指摘した。

 安保法や特定秘密保護法に反対する声を上げる理由として、「わたしたち牧師や教会は、社会活動をしようとしているのではない。自らの信仰に基づき、聖書の原則に立って、『平和を作る者は幸い』というイエスの言葉に立ち、それとは真逆の方向に行こうとしている権力者に対して声を上げていく。信仰告白をしていく」と説明。

 平和を作り出す人として生きることは、国や社会、人々のために祈ることだとし、祈りの土台として神の平和を握りしめ、小さなところから平和を作ることが最初の一歩だと述べた。また、日本が「戦争する国」になることを危惧し、「『平和憲法ここにあり』との声を上げ続けていきたい」と訴えた。

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