ルーテル学院大に新オルガン 〝教会は音楽で生まれ変わる〟 ガルニエ社の兄弟が提言 2016年10月1日

 7500時間という工期の末、7月末にルーテル学院大学(東京都三鷹市)チャペルに新しいパイプオルガンが誕生した。上部にはルターのシンボルマークの紋章が配され、その下を走る帯には、ルターの宗教改革のスローガン「恵みのみ、信仰のみ、聖書のみ」がラテン語で描かれている。製作を請け負ったガルニエ・オルグ・ジャポン社(埼玉県新座市)のマチュー、ボリス・ガルニエ兄弟に、「チャペルに向けたオルガン製作」について話を聞いた。

 2014年4月から16年3月まで、パイプオルガン設置のための募金活動を行ってきた同学。

 きっかけは、13年に亡くなったチャペルオルガニストである北尾幸子氏(日本福音ルーテル教会鴨川教会員)からの寄付。同氏は人生の締めくくりに当たり、信仰をもって生涯を過ごせた感謝を表すため、「牧師養成を行うルーテル学院に新たなパイプオルガンを」と、同学に多額の献金をささげた。パイプオルガンの老朽化が進み、修繕も困難だったため、かねてから新しいパイプオルガンの設置を願っていた後援会は、これを機に2年間の募金活動を展開。目標額に到達し、この度の設置につながった。

 同学がガルニエ社を選んだ理由は、同学オルガニストの湯口依子氏と日本ルーテル教団東京ルーテルセンター教会オルガニストの深井李々子氏が、オルガン製作者であり同社を設立したマルク・ガルニエ氏(マチュー、ボリス兄弟の父)と面識があり、同社製品に信頼を寄せていたからだという。

 1972年にフランスで創立した同社は、日本では82年に初めてパイプオルガンを製作し、松蔭女子学院大学(神戸市灘区)に納入。97年には日本支社を設立。これまで日本ではおよそ150台のパイプオルガンを製作し、聖路加国際大学聖ルカ礼拝堂(東京都中央区)、東京藝術大学奏楽堂(東京都台東区)、東京芸術劇場(東京都豊島区)などに納めてきた。

 2011年の東日本大震災の際、他社が自国に引き上げ、オルガン製作者も、メンテナンスや耐震補強工事を行う人もいなくなり、コンサートすら開けない混乱した状況を見て、自分たちは日本に留まると決意。自社の仕事と並行して、海外に引き揚げた他社製品のメンテナンスや耐震工事も続けている。

 同社の最大の特徴は、昔ながらの製作方法に徹していること。現在一般的には、工房で楽器を製作し納入する方法がとられているが、同社では実際に楽器が使用される場所で製作する。そのような製作方法をとっているのは、現在同社のみだという。弟のボリス氏は言う。

 「19世紀に入ると、同じ型のパイプオルガンを量産で作るようになった。フランス、北ドイツ、スペインなどそれぞれの土地によって音楽も異なるのに、同じ規格の楽器ではおかしい。それまでのヨーロッパでは、その土地の木材を使い、演奏される場所でパイプオルガンは作られていた。そのように作られた300年前の楽器は現在も残っているが、今でもすばらしい響きをもつ。その土地の空気や会堂に入る人数、演奏の目的が賛美のためか、コンサートのためかなどで本来音の作り方は変わるはず」

 

「信徒以外にも弾ける機会を」

 今回のオルガンの特徴について兄のマチュー氏は、「バッハは音楽を書いていた時、ルターの宗教改革を念頭に置いていた。それは聖書とオルガンと音楽がつながっていたということ。ここはルターの大学だから、ルターを称える深い気持ちを音楽で伝えなくてはならない。それがここのオルガンの一番の特徴」と話す。

 音の作り方の違いについては、「賛美で会衆が歌うための楽器か、コンサートで聴かせるための楽器かが最も異なる点。教会の楽器は歌いながら音が聴こえなくてはいけないので、しっかりした音を作る。しかし前奏や後奏の際など、聴くだけの時もあるので音が強すぎてもいけない。また、礼拝の人数が少ない時から、チャペルコンサートで150人が来る時にも対応できるように、音の幅の強さを大きくしなければならない」と、教会用パイプオルガンの製作の難しさを語った。

 実際2人は、製作に入る前、同学チャペルの礼拝に通い、音づくりのために残響を何度も確かめたという。「パイプオルガンは作り終わってからが本番。同学とも楽器を通してこれから関係が始まっていく」

 完成したパイプオルガンの頂点に配置されたルターの紋章は、同社から学院への贈り物。

 マチュー氏は日本の教会の音楽事情について、「ヨーロッパでは、音楽を聴く目的で教会に来て、その後クリスチャンになる人が多かった。日本は教会の入口として音楽の入口がない。また教会員にならなければ、オルガンを弾けない。オルガンは弾くほどに良くなるものだし、教会は神さまのお家なのだから、楽器も含め開放してほしい」と述べた。オルガニストについても、「長い間勉強をしてプロになったのだから、奉仕ではなく働きに見合った報酬を支払ってほしい。それぞれの教会がオルガニストを抱え、音楽礼拝や教会コンサートを行うことで、教会は生まれ変わる」と提言した。

 6月30日には同学チャペルで、ルーテル教会関係者と一般からの応募者に向けて、パイプオルガン完成前見学会が開催された。江藤直純学長のあいさつに続き、湯口氏がオルガンの歴史、仕組みなどについて解説。「弦でハンマーを叩くピアノと異なり、パイプオルガンは鍵盤を下ろして上げる瞬間が大切。鍵盤の押し方によって音色が変わってくる。パイプオルガンは注文建築と同じで、同じ楽器は二つとない。ガルニエ社はこのチャペルに合う音を作ってくれた」と語った。

 お披露目コンサートは9月22日、「ルーテル学院1日神学校」のプログラムの一環として行われた。

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