日基教団前橋教会130周年記念講演 〝特異点〟として裾野を広く 内田樹氏×釈徹宗氏「ハタから」語る 2016年11月5日

 海老名弾正によって1886年に創立した日基教団前橋教会(群馬県前橋市)が130周年を迎え、これを記念する講演会として、思想家であり武道家の内田樹氏=写真左=と宗教学者の釈徹宗氏(浄土真宗本願寺派僧侶)=写真右=による対談が10月15日、同教会を会場に行われた。司会は、同教会牧師の川上盾氏と季刊「ミニストリー」(キリスト新聞社)編集長の松谷信司が務めた。テーマは、同誌の企画から「ハタから見たキリスト教」と名付けられ、歴史的、文化的側面からキリスト教に期待される役割について意見を交わした。場内は150人の信徒らで満席となった。

「宗教のメガネ」で世界を見る必要

        

 神戸女学院大学で教鞭をとっていた内田氏は、入学式などの式典で礼拝を体験し、書物では知ることのできなかった「行為」としてのキリスト教に触れ、感銘を受けた。また教務部長として講堂で聖書を朗読する役割を担ううちに、それが喜びとなり、退官の折には悲しい思いをしたと吐露。今でも合気道の合宿では、ほとんどが信者でないにもかかわらず食前の祈りを欠かさず唱えているという。
 一方、釈氏は「社会活動をしていると、どんな領域でも必ずクリスチャンに会う」とし、当事者研究を学んだ「べてるの家」をはじめ、それぞれの現場で草の根的に活躍するクリスチャンの働きを高く評価した。また、バチカンを訪問して「ピエタ」を目にした際には、「改宗しそうになった」ほどの衝撃を受けたという。

 川上氏が「人口の1%にも満たない信徒数」について聞くと、内田氏は「信者ではなくても、国民の9割が何らかの形でクリスマスに参加するという日本のあり様は、他の国では類を見ない」と応答。釈氏は、ある調査から「神さまはいる」と答える割合は2割だが、「いない」という答えも少なく、「分からない」が多数を占めたという結果を紹介し、「これこそが日本人の宗教観」と述べた。

 また、その宗教観を「円卓の真ん中を空けておく」と表現し、確固たる軸は持たずに、諸宗教を同等に着座させるイメージにたとえた。一方、キリスト教は真ん中に太い軸を置く宗教。その違いが、日本にキリスト教がなじまない一因ではないかと分析した。

          

 内田氏は、「キリスト教は、現代とは異なる時間軸を持った〝特異点〟として存在する。19世紀以降の日本のキリスト教がもたらした最大の功績は、社会の価値観に同化しなかったということ。外部の世界がどう変わろうと、強者のロジックから距離を取ってものを考える〝特異〟な場があるということは重要。今後も〝特異点〟がマジョリティになることはあり得ないが、知的・霊的な生産性の拠点になってきた」と指摘した。

 釈氏は、「日本人は長い歴史の中で、クリスチャンでなくてもキリスト教のメガネをかけて世界を見ることが可能になってきている。今後は、イスラム教のメガネも必要になる」「今後、爆発的に信徒が増えることはないが、キリスト教は間違いなく人類に大きな影響を与えてきた。たとえ信徒数は少なくても、山が高ければ高いほど裾野は広い。その豊かさを大切にしてほしい」とエールを送った。

 130周年という記念の節目にキリスト者以外を招くことについては、教会内でも議論があったが、結果的に地域の非信徒も多数訪れる機会となり、川上氏は確かな手応えを感じたと振り返った。

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