教会と地域福祉をつなげるために 引地達也氏・最上義氏がアーモンドの会で発題 2016年10月8日

 「教会と地域福祉――つながる、から始めよう」をテーマに、日基教団関東教区埼玉地区「障がいを負う人々と共に生きる教会を目指す懇談会」(アーモンドの会、山野裕子実行委員長)が9月19日に埼玉和光教会(埼玉県和光市)で開かれた=写真右。22回目の今年は、引地達也(シャロームネットワーク統轄)、最上義(福祉教育支援協会代表理事)の両氏を発題者に、約80人の参加者が意見を交わした。

 福祉教育支援協会(埼玉県所沢市)は、就労移行支援事業所シャローム所沢とシャローム和光を運営している。就労移行支援事業所とは、障害者総合支援法に定められた障がい福祉サービスの一つ「就労移行支援」を提供する事業所で、最長2年間、職業訓練や面接対策などを通して就職活動をサポートする。一般就労等を希望する18歳以上65歳未満の、障がいや難病のある人が利用できる。

       

 最初に登壇した最上氏=写真左上=は、障がい者の就労支援に関わるようになった経緯を説明。自身が所属する所沢みくに教会で、ある青年が数年前に自死したことがきっかけになったと話した。うつ病を患っていた青年に対して、一教会員である自分に何ができたのかを考え、就労移行支援に関わることを決意したという。

 昨年8月に開設されたシャローム所沢では、今年の春10人の就職者を送り出したが、まだ就職の見込みが立たない人もおり、2年が過ぎれば出て行かなければならない。

 シャローム所沢の開設準備中、最上氏は地域の教会にあいさつに行き、「教会と連携しながら就労支援ができないか」と相談したという。その目的には、「障がいのある人で就職に困っている人がいれば紹介してほしい」ということだけでなく、「教会が〝居場所〟として、事業所を出た人を受け入れてほしい」という側面もあった。しかし牧師の返答は、「教会の中心は牧会活動にあり、神さまのみ言葉を聞くことにある」「教会に与えられた役割と機能、能力を考えた時に、教会に何がどこまでできるのか丁寧に考えなければならない」というものだった。

 同氏は、「我々は事業所としてどこまですべきなのか。どこまで踏み込んでよいのか。事業所のスタッフ同士でも意見が分かれる。教会のものは教会に、行政のものは行政に、事業所のものは事業所に、それぞれの機能と役割を正しく認識し、相互に理解した上で、つながりを考えていく必要がある」と強調。

 心が深く傷つき、生活面でも経済面でも自己管理ができず、周囲への依存心が強く、自死の危険性が高いある利用者から、「教会に通うようになったら元気になるだろうか」と尋ねられた際、「教会に行くべきだ」と答えることが無責任に感じられ、教会に行くことを勧められなかったと明かした最上氏。教会と地域福祉の役割とつながりを考える時、「きれいごとや理想だけでは済まされない現実の課題がある」と指摘した。

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 続けて発題した引地氏=写真右下=は、シャロームの特徴として、コミュニケーションが基本にあると話し、心の支援と信頼関係の構築が就労支援の基本だと指摘。相手を受け入れるためには「聴く」ことが大切であり、行動を伴う「効く」ことが支援者に求められていると語った。

 問題を抱えた人が教会に相談に来た場合には、その問題を認識した上で、地域にあるそれぞれの相談窓口に橋渡しをしてほしいと呼び掛けた。

 また、東日本大震災の被災地支援と復興に関わってきた経験から、「場所づくり」「仕組みづくり」に加えて「人づくり」の大切さを強調。「教会も支援の方法と他者とのつながりを具体化していけば、それだけで十分にすばらしい機能をこの社会で果たせるのではないか」と提言した。

 質疑応答では、薬物依存症のリハビリ施設に勤務していた男性が、「当事者でないのに何が分かるのか」という当事者からの問い掛けにどう答えたらよいかを質問。引地氏は、そのような問い掛けに対しては「分からない」と答えていると述べ、分からないから分かろうとするのであり、その日々の努力が寄り添うことであると回答。「当事者に近付き、分かろうとすること自体が大事」と語った。

 他の参加者からは、「『教会に行けば100%ハッピーになる』と思っている人がいれば、それは明らかに間違い。それを本人にどう伝えたらよいのか。それとも『教会に来なさい』と言った方がよいのか」という悩みや、心の病を抱えた人に対して役員会の判断で教会に来ることを断った例などが挙げられた。

 

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