阪神間の風景が作品の背景に 関西学院大学で遠藤周作学会全国大会 2016年10月15日

 遠藤周作学会(笠井秋生代表=梅花女子大学短期大学部名誉教授)の第11回全国大会が9月17日、関西学院大学(兵庫県西宮市)で開催された。会員を中心に45人が出席した。

 今年は遠藤の没後20年、『沈黙』刊行50年の節目にあたる。「遠藤文学」だけでなく「遠藤周作」そのものを研究することを目指して2006年に設立された同学会も創立10周年を迎え、遠藤が少・青年期を過ごした宝塚市仁川に近い関西学院大学を会場とした。

 最初に総会が行われ、代表の笠井氏が顧問に、副代表の川島秀一氏(大阪成蹊短期大学教授)が代表に、山根道公氏(ノートルダム清心女子大学教授)が副代表兼事務局長に就任した。

 続いて、アナンド・サンチット(大阪大学大学院生)、福田耕介(上智大学教授)、柴崎聰(恵泉女学園大学講師)、古浦修子(大阪産業大学非常勤講師)、余ハンハン(広島大学大学院生)の5氏がそれぞれ、「遠藤周作『学生』論――白い手の意味するもの」「遠藤周作の初期長篇小説における父性の瓦解」「『沈黙』における比喩――『権力と栄光』との比較において」「遠藤周作『侍』論――二つの物語の交錯をめぐって」「遠藤周作『深い河』論――啓子の人物像を中心に」と題して研究発表を行った。

 また、細川正義氏(関西学院大学教授=写真)が「遠藤周作文芸と阪神間」と題して講演。遠藤の没後編まれたり刊行された、彼を身近に知る関係者の証言を引用しながら、その生涯をたどった。

 遠藤は10代の頃、伯母の勧めで母・兄と共に西宮市の夙川カトリック教会に通い、受洗。その後、旧制高校受験に失敗した遠藤は、仁川で浪人生活を送る。

 細川氏は、この頃の阪神間(阪急宝塚線沿線)の風景が、遠藤の『黄色い人』などの作品の背景にあることを指摘。仁川の自然を始め、小林聖心女子学院、法華閣という寺、宝塚文藝図書館などの思い出と風景が、後に作家となる遠藤にとって切り離せない存在になったことを強調した。

 特に宝塚文藝図書館は、浪人中の遠藤が日本や外国の小説を読みふけった思い出深い場所であり、後の作家生活の源泉となった場所であることを紹介した。

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