「教会と地域福祉」フォーラム21 ボランティア・福祉・教会 今後の展望語り合う 2016年10月22日

 2014年以来、年2回のペースで継続してきた「教会と地域福祉」フォーラム21のシンポジウムが10月1日、初めて関西で開かれた(キリスト新聞社、東京基督教大学共立基督教研究所共催、いのちのことば社出版部、賀川記念館後援)。会場は、社会事業家として地域福祉にも寄与した賀川豊彦とゆかりのある賀川記念館(神戸市中央区)。「ボランティア・福祉・教会のこれから」と題して、岩村義雄(神戸国際キリスト教会牧師)、木原活信(同志社大学教授)、釈徹宗(如来寺住職、相愛大学教授)の3氏が登壇し、稲垣久和氏(東京基督教大学大学院教授)がコーディネーターを務めた。兵庫県内外から約30人の信徒らが集まり、教会と福祉との関わりを振り返りつつ今後の展望を語り合った。

今こそ教会の役割再考する時

 東日本大震災の被災地で長くボランティア活動を続けてきた岩村氏は、福祉とボランティアを考える際に「自治」「公共性」「無償性」「自発性」という概念だけでなく、慈悲(深い憐み)の原語である「スプラグニゾマイ」や、琉球語の「ちむぐるしい」に該当するような、苦しむ人々を見捨てられないという素朴な思いに立ち返る必要性を強調。そのロールモデルとして、奈良時代に民衆の苦しみと共に生きた僧侶・行基を紹介し、さまざまな福祉事業の原点に注目した。

 また、現代的な課題として、相模原での障がい者殺傷事件の背景と考えられる優生思想や、尊厳死の問題を挙げ、命を軽視するエートスに宗教者がどう向き合うか、そのために異なる信仰者がいかに対話を広げられるかとの問いを投げかけた。

 「憲法の『幸福追求権』(13条)、『社会的生存権』(25条)という平和的生存権が脅かされない公共性の樹立が急がれる。宗教者が被災地において単なる風景としての寺社仏閣や教会ではなく、息も絶え絶えの人々の涙の革袋として、実践を地道に積み重ねていくリアリティーを示すしかない」

 次いで木原氏は、教会が福祉に取り組むことに対し、牧師から出される批判として「福祉実践をせよと言われると責められているような気分になる」「福祉は行政のや専門家の仕事ではないか」「伝道・布教がおろそかになるのではないか」「教会の聖性が失われ世俗化してしまう」などの声を紹介。

 一方、信徒からは「息子は自閉症だから教会へ行けない」「性的マイノリティであることを公表したら教会の反応が変わった」「牧師は差別、人権の大切さをよく語るが、具体的にどう関わったらいいか教えてくれない」などの声を聞いてきたという。

 同氏はこれまでの「教会派」と「社会派」という分断の中で、わたしたちは「パッションを失っていないか」と提起。「地域に遣わされた者として、地域に仕え、地域に出かけているのか。教会は来客を迎えるだけの場所ではない。イエスは教会や会堂の中にいて待っていたのではなく、『外に』出ていって他者と出会った」と指摘した。

 その上で、キリスト教福祉の歴史を概観。明治以降、山室軍平、石井十次、賀川豊彦など、数多くのキリスト者が福祉の実践に関わりながら、戦後の福祉国家成立によって宗教と福祉が分離され、教会が福祉の役割を失った。その結果、福祉は主体的なボランタリズムから公的な「措置」となってしまったが、2000年の社会福祉基礎構造改革以降、新たな段階に入り、市民的公共圏における教会の役割を再考する機会が再び訪れていると述べた。

持続可能性を高めるために

 釈氏は、全国7万7千のうち約2割が休眠状態にあるという「寺院消滅」の危機について、「地域コミュニティと密接な関係にあるので、コミュニティが死ねばお寺も消滅するしかない」としつつ、「マクロで見ると絶望的だが、ミクロで見れば面白い実践例もある」とし、自身の取り組みを紹介。認知症患者のグループホーム「むつみ庵」は空き家を活用し、檀家に協力を仰ぎながら、雇用の創出、地域の経済的活性化にも貢献しているという。阪急曽根駅前の寺子屋「練心庵」では若者向けの講座も開設し、運営の手助けとしている。

 また、内部の絆を深める「ボンディング」と他の宗教者と対話する「ブリッジング」の関係についても示唆。これまでの仏教界は前者だけに偏ってきたが、現代社会において評価を受けるには後者も重視していく必要があると提起した。

 最後に課題として、「個人的には伝道と社会的活動を分けたいと考えているが、どうしても分かちがたい部分もあり、その間の橋渡しをどうすべきか」「活動の持続可能性を高めるためにはビジネスモデル化しなければならないが、活動が目的化してしまい、何のための活動か分からなくなると本末転倒」という2点を挙げた。

 三者によるパネルディスカッションに続き、少人数でのグループディスカッションが行われ、それぞれの地域で「学習支援」や「子ども食堂」に取り組む教会の事例についても報告された。

 今回のシンポジウムには、福祉施設で働く神奈川県在住の青年や、福祉を学びながら何度も被災地に足を運んでいるという学生も参加。教派を超えて提起されたさまざまな意見や課題について、熱心に聞き入っていた。

 

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