髙田三郎の「音楽の力」味わう 東京YMCA午餐会に鈴木茂明氏 2016年10月22日

 合唱組曲「水のいのち」や「典礼聖歌」の作曲で知られる作曲家・髙田三郎(1913~2000)の果たした役割を検証しようと、声楽家で指揮者の鈴木茂明氏=写真=が「髙田三郎『歌唱音楽の力』」と題して9月28日、東京YMCA午餐会で語った。会場の東京大学YMCA(東京都文京区)に55人が集い、髙田の作品を共に歌いながら「音楽の力」を味わった。

 混声合唱団コーロ・ソフィアや筑波大学混声合唱団の指揮者を務める鈴木氏は、髙田三郎作品の個展「リヒトクライス演奏会」を1993年より主宰し、今年で22回目を迎えた。

 髙田は20代半ばの頃、日本には日本の音楽史があるべきだとして、日本人のために自分の一生を使おうと決意する。逝去する1カ月前まで続いたという作曲は、管弦楽曲、オペラ、カンタータ、室内楽曲、ピアノ曲、オルガン曲、独唱曲、合唱曲に及ぶ。代表曲「水のいのち」は1964年に初演され、50年以上歌い継がれている。

 その作風について鈴木氏は、「日本伝統音楽と西洋音楽を溶かし合わせて、日本を意識しながら精力的に作曲に取り組んだ」と紹介。鈴木氏は髙田の合唱曲に出合った時、「日本人でよかった」と感じたという。「それはドイツ・リート(ドイツ歌曲)にもなかったジャンルの立派な文学と、力強く繊細で美しい音楽が見事に結合し、テクストの内容を彷彿とさせるものだった」。そして髙田から20年以上、指揮法や演奏法を学んだ。

 髙田は約220曲の「典礼聖歌」も遺した。「典礼聖歌」はカトリック教会のミサ中に歌われるもの。第二バチカン公会議によって、それまでラテン語で行われていたミサが各国語で行われるようになり、日本カトリック司教団の要請で髙田が日本で初めてその作曲に着手した。鈴木氏はそれを、「グレゴリオ聖歌の精神を根幹として、日本人の心の奥から祈りを引き出すもの」と解説。髙田と共にイタリア、フランス、イスラエルで典礼音楽による日本語の歌唱ミサと演奏会を行ってきたことを振り返った。

 最後に、髙田のレッスンは厳しかったと述べつつ、「それほどに命を懸けて本当の音楽を伝えてくれた」と述懐した。

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