「宗教改革500年」を前に企画展 ルーテル学院大図書館で11月5日まで 2016年10月22日

 2017年の宗教改革500年を前に、一般の人たちにも宗教改革とルターについて知ってもらおうと、ルーテル学院大学図書館(東京都三鷹市)が11月5日まで、「宗教改革500年プレ・イヤー図書館企画展」を開催している。

 最初に目に入るのがパネル展示「ルターとは? 宗教改革とは?」。

 ルターの生誕、修道士志願のきっかけとなった落雷体験、「神の義」に対する認識の180度の転回、宗教改革の引き金となった「95カ条の提題」、教皇からの破門、新約聖書のドイツ語訳着手、ドイツ語の賛美歌制作など順に読み進んでいくと、ルターの生涯と仕事が理解できるようになっている。

 またルターの著作と社会に与えた影響、ルターのドイツ語訳聖書の特徴などについての説明や、ルターに続く宗教改革者ツヴィングリやカルヴァンについての解説、宗教改革に影響を受けた欧州諸国の教派の分布、カトリック教会の改革、農民戦争・宗教戦争など「宗教改革とは何か」が俯瞰的に解説されている。

 もう一つのパネル展示は「100年前、日本で宗教改革400年はどのように祝われたの?」。
 100年前の1917年(大正6年)当時の日本福音ルーテル飯田教会(長野県飯田市)での「宗教改革祝賀会」の集合写真の展示では、100年前の祝賀の様子が、またローマ・カトリック教会が同年に機関紙『聲』で取り上げた「ルッテルの宗教改悪」という連載記事の転載からは、プロテスタント諸教会とローマ・カトリック教会の間にあった当時の厳しい緊張関係をうかがい知ることができる。この展示は歴史神学専門の同大教授ティモシー・マッケンジー氏が監修。2種類のパネル展示の周囲には企画に併せた同図書館の蔵書も並べられている。

  (左から)矢野、江口、大栗の各氏

 「ルターとは? 宗教改革とは?」展示の監修を担当した同図書館委員で同大教授の江口再起氏と、同図書館司書の矢野麻子氏、大栗のり子氏に話を聞いた。

 「今回の企画の筆頭目的は、『ルーテル』(学院や教会など)と『マルティン・ルター』をつなげること。世間では『ルーテル』が『ルター』だという認識が薄い。神学書の蔵書は東洋一と言われる同図書館なので、パネルと蔵書の展示を並行した企画を考えた。また三鷹市の職業体験で同図書館を訪れた歴史好きの高校生が蔵書に感動したことが今回の企画のヒントになった」と矢野氏。

 今回の企画展では、パネルと蔵書の展示と並行して、「学生による関連書籍コーナー」も設置。これは9月2日に教文館(東京都中央区)で担当学生6人に「ルター」「宗教改革」をイメージする書籍を「ブックハント」(書店の中から図書館に置きたい本を直接選ぶこと)させたもの。「6人の学生はキリスト教、臨床、福祉など学科はさまざま。信仰の有無も多様。ルターをイメージし『結婚』に関する本を選ぶなど、予想を超えて幅広いフィールドの書籍が集まった。教文館側もブックハントは初の試みだった」と大栗氏。

  (学生6人による書籍展示)

 100年前との違いについて江口氏は、「400年記念の時は、過去を振り返っての〝お祭り〟という色が強かった。今回は過去を振り返るのではなく、そのような過去を持っているわたしたちがこれからどう生きていくかの未来志向になっていくと思う。エキュメニカル運動や、教皇フランシスコが外向きの目をもって積極的に活動しているのを見ても、キリスト教界全体がそのような方向にあるのではないか」と語る。

 「福祉国家と言われる北欧など、福祉行政がうまくいっている国はルター派が多い。それはルターの思想が平等思想、人権思想だから。現在は当たり前の義務教育、人々が礼拝で賛美歌を歌うこと、聖職者の結婚など、当時は考えられないことだった。そのような平等思想に先鞭をつけた人がルター。宗教改革というと、日本では宗教内の出来事と小さく受け取られてしまうが、『キリスト教=社会』だったヨーロッパの国々にとって宗教改革は『社会改革』だった。ルターの行ったことが500年を経ても伝わった理由はそこにある」と、ルターの行った宗教改革の本質を語った。

 最終日の11月5日限定で『マルチン・ルーテル』(武藤健、日本基督興文会、1917年)など約100年前の書籍5冊と、1630年に発行されたルター訳の新旧約聖書『メリアン聖書』も展示される予定。開館時間は月曜~木曜午前9時~午後8時(金曜午後9時、土曜午後7時まで)。11月3日(木)~5日(土)は午前9時~午後5時。日曜休館。無料。問い合わせは同図書館(℡0422・31・4814)まで。

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