東洋英和女学院大で連続セミナー 「日本の近代化とキリスト教学校」テーマに 2016年11月5日

 東洋英和女学院大学(東京都港区)は、同学院と港区との連携事業の一環として、「日本の近代化とキリスト教学校」をテーマに、「村岡花子記念講座」開設企画セミナーを開始した。来年1月までの全5回。

 10月15日の第1回「女子教育とミッションスクール」には約170人が参加。村上陽一郎(東洋英和女学院大学前学長・現学院評議員=写真左)、加納孝代(活水女子大学学長=写真右)の両氏が基調講演を行った。

         
 「基督教と学校教育」と題して講演した村上氏は、ミッションスクールとは福音を宣べ伝えることを目標とした学校組織であり、19世紀以降、植民地政策と共にアジア、アフリカに拡大していったと解説。明治初期の日本では、キリスト教は近代化のための道具だったが、次第に危険視されるようになり、1899年の文部省訓令第12号(宗教教育禁止令)によって多くのミッションスクールが専門学校化し、正規の学校として認められなくなったという歴史を概観した。

 加納氏は「婦人宣教師と日本の女子教育」と題し、海外へ婦人宣教師を派遣した19世紀の米国の社会的背景を解説。男性の牧師とは異なり、婦人宣教師は教会で牧会ができず、その力を「教育」に向け、働く女性のロールモデルや、結婚してクリスチャンホームを作る生き方を示したことを指摘。キリスト教学校が「良い人間になろうと励まし、良い人間を育てる教育」を教育目標に掲げてきたことを強調し、教育は職業に就くための過程ではなく、良い人間になるための過程であるべきだと語った。

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 続くパネルディスカッションでは、池田明史氏(東洋英和女学院大学学長=写真左下)が加わり、同学院高等部卒業生の泉恵理子氏(『日経ビジネスアソシエ』編集長)がモデレーターを務めた。

 池田氏は、「一億総活躍社会」という言葉が繰り返されること自体が、そのような社会になっていないことを意味しているとし、「日本の社会は相変わらず男性優位のまま。労働人口に求められているのは、即戦力、効率性、合理性、競争力、得点主義。そのようなメインストリームの中に自分を合わせ、男性と競合して打ち勝っていくことが女性の成功者だとみなされる風潮がある」と指摘。

 「本来の男女の平等や総活躍とは、それぞれの特性を生かして相互補完的な社会環境、労働環境を作ることにある」とし、「キリスト教学校の女子高等教育に求められることは、社会との関わりや働き方の中で、いかに自分たちの内発的な動機を高めていくかということに関わる。達成感、成長感、自己効力感というところで社会との関わりや仕事の価値を見出すあり方に変わっていかなければ、男女の平等や総活躍社会は実現しない」と訴えた。

 
 加納氏は、「学校は単に知識や技術を教えるところではなく、人に育て上げる場所」だと強調した上で、「男女が半分ずつ力を出し合い、家庭を支え、社会を支え、地球全体を支えていくべき。その意味で、男性と女性が受けるべき教育は同じでなくてはいけないし、働く可能性も同じでなくてはならない」と主張。

 一方、池田氏は「(男女には)得手不得手がある。コミュニケーション能力では女性の方が圧倒的に有利」と述べ、女子大の教育でも、得意分野を伸ばすようなカリキュラムを開発することを提案した。

 それに対して加納氏は、「女性は今まで不得手だったことを得手にするために社会に出たがっている。男性が不得手としていたことを得手にするために家庭に入っているかというとそうではない」と強調した。

 これからの女子教育について村上氏は、「クリスチャンという限定がなくても、自らの魂を磨けるような習慣を作っていく誘い水を用意することが学校の使命だと思う」と述べた。

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 同セミナーは、同大が2017年度より新たに開設する「村岡花子記念講座」(詳細は未定)の告知を兼ねたもの。第2回の酒井ふみよ氏(東洋英和女学院史料室嘱託)の講演は10月29日に行われた。

 第3回(11月19日)は与那覇恵子氏(東洋英和女学院大学教授)、第4回(2017年1月21日)は池田氏が講師を務める。最終回となる1月28日は、「これからの社会とキリスト教学校」と題して村岡恵理(作家)、深町正信(東洋英和女学院院長)、深井智朗(東洋英和女学院大学教授・学院宗教部長)の3氏によるパネルディスカッションが行われる。

 各回とも無料(先着200人)。午後2時~4時、同大学大学院201教室(六本木キャンパス)で行われる。申し込み締め切りは各回開催日の2週間前。問い合わせは同大生涯学習センター(℡045・922・9707)まで。

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