北関東医療相談会・長澤正隆事務局長インタビュー 〝在留外国人の健康守りたい〟 2016年11月12日

 「国籍を問わず生活困窮者を救いたい」――北関東を中心に、外国籍・生活困窮者のための無料健康診断会や法律相談を行っているNPO北関東医療相談会(通称AMIGOS=アミーゴス、群馬県太田市、後藤裕一郎理事長)。特に在留外国人が国籍や在留許可の有無などに関係なく医療を受けられる環境づくりを目指している。事務局長の長澤正隆さん(カトリックさいたま教区終身助祭)は、「仮放免者」と呼ばれる人々の実態を知ってほしいと訴えている。

イエスの言葉と行いを継承して

 1997年にスタートした医療相談会(無料の健康診断と弁護士相談)は、今年11月6日で40回を迎えました。毎回、日本語、英語の他にタイ語、ベトナム語、スペイン語、ポルトガル語など13カ国語でチラシと問診票を作成しています。埼玉県川口市で開催した時は、クルド人が多いのでトルコ語でも準備。言語を整え、その人の生活に根差した準備をしないとこの事業はできません。特に医療通訳は不可欠です。

 群馬県太田市で、教会関係者が中心となって立ち上げた「フレンズ」(群馬外国人労働者支援連絡会)というグループが現在の活動の基盤になっています。太田市は外国人の国籍が最も多い地域。「外国人のための医療相談会」と97年に名称をあらため、年数回の医療相談会を実施してきました。2013年にNPOとして北関東医療相談会を発足。活動範囲も群馬、栃木、埼玉、茨城まで広げてきました。

 無料健康診断で病気が見つかった人は病院へ連れて行きます。昨年は20人を連れて行きました。その費用をアミーゴスが負担するには限界があります。健康保険に入っていれば問題ありませんが、相談に来る人の9割以上が社会保険にも国民健康保険にも加入していません。その多くは「仮放免」(入管施設に収容された外国人が病気などの理由で収容を解かれること)になった人々です。仮放免者の数は全国でおよそ4千人。そのほとんどが関東に集中しています。

 現在では、「無料低額診療」を行う病院が増え、外国人だけでなく日本人の生活困窮者も利用できるようになりました。しかし、治療が間に合わず亡くなってしまう人もおり、「健康保険に入っていれば死ななくて済んだのでは」という思いが常に付きまといます。

 会員90人中、医師が11人、弁護士が2人います。会員の多くは年金受給者の女性や会社員など。カトリック信徒が中心ですが、プロテスタントの信徒や仏教者とも協力しています。

 わたしたちは自分たちの活動を「善きサマリア人」に重ねます。「地域や宗教を超えて愛し合わなければならない」というイエスの言葉に沿ってわたしたちは生きなければならない。最も貧しい人とどう関わっていくかが大切です。関わらないと見えてこないものがたくさんある。在留資格がなければ行政は何もしませんが、逆の立場であればわたしたちも同じではないでしょうか。行政が制度を越えることができないのであれば、わたしたちが代わってそれをやらざるを得ません。

 医療相談会に行く費用がないという人には交通費を支給します。医療相談会では昼食も提供し、最後に米を持って帰らせます。手配する米の量は年間2㌧。「日本に来てこんなに親切にされたのは初めて」という声をよく耳にします。

 宗教者として、イエスの言葉と行いを継承していく必要があります。イエスは弟子を連れて歩き、弟子に見せるようにさまざまな行動をとりました。わたしたちの実践に共感してボランティアが集まってくるのは、キリストがその中で働いているからでしょう。

 あちこちで医療相談会を開催していると、「旅をしているようだ」と言われることがあります。北関東はわたしにとって「ガリラヤ」。ボランティア仲間を集め、貧しい人に手を差し伸べ、食料を与え、病気を癒す。まるで聖書の世界です。

             

無料の健康診断会で食事も提供

 任意団体の時は100万円だった収入が、今は400万を超えてきました。地域と連携し、助成金によって法律相談や食糧支援、通訳援助、医療機関につなげ、生活困窮者を支援していくことが目標です。今年7月、初めて群馬・大泉町の生活保護担当者が、わたしたちが集めた助成金の一部を使って、胃潰瘍の女性を病院に連れて行ってくれました。行政もわたしたちも一緒に問題を考えていこうということです。

 一方で先日、体の不調を訴える人から突然電話があり、休日診療の病院に連れて行くと、体温を測り、問診して、予約のために住所を書いただけで1万円を請求されました。保険に加入していない人に対しては150%の金額を請求すると言うのです。それが現実です。

 仮放免者の実態を社会はあまりにも知らない。ホームレスは生活保護を受けられますが、仮放免者にはそれがない。お金もない。食べるものもない。無料低額診療の病院に行かなければ医療も受けられない。

 仮放免者は今後ますます高齢化し、仕事もできず、介護を受けなければならなくなります。帰国しても疎まれたり、差別されたり、テロリストに追われるような立場の人もいます。わたしたちの活動は、北関東を旅しながら、そうした貧しい人を元気にし、健康に戻すことです。

 健康は人間の生きている証、活力の源です。それをわたしたちは守りたい。1回の医療相談会で受け付ける人数は最大70人。医療相談会の後には必ず結果報告会を行います。現在270人のボランティアがいますが、できるだけ各地域でボランティアを育てていきたいと願っています。

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 第41回医療相談会は11月20日(日)午前10時~午後2時、茨城県取手市のあおぞら診療所(医療福祉生活協同組合いばらき)で開催される。無料。対象は15歳以上の外国人及び日本人。検査項目は胸部レントゲン、尿検査、子宮頸癌検査(希望者)、血液検査、心電図など。弁護士による無料相談会もある。問い合わせは長澤さん(℡080・5544・7577、午後7時~10時、予約可)まで。今後の開催予定などはホームページ(http://npo-amigos.org/index.html)を参照。

 ながさわ・まさたか 1954年生まれ。酪農学園大学卒業後、食品会社に就職。2006年にカトリックさいたま教区終身助祭となる。

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