創刊70周年記念号 巻頭メッセージ 協働なしに宣教の使命果たせぬ 原 誠 2016年11月19日

 15年間続いたアジア・太平洋戦争の敗戦後間もなく、1946年4月27日に創刊された「キリスト新聞」は、今年70年目を迎えた。したがって「キリスト新聞」は文字どおり日本の戦後史の歩みの中で、日本と世界のキリスト教を報じてきたことになる。

 「キリスト新聞」は、武藤富男氏と賀川豊彦氏が45年12月半ば過ぎに会って、たった3分の話し合いで「キリスト教新聞」ではなく「キリスト新聞」として刊行することが決まったとされる。その「創刊の辞」は「闇市の雑踏の中に、忽然として一人の人物が姿を現わす。その顔は日の如く輝き、まなざしには限りない慈愛が溢れ、衣は光の如く白い。彼は手をさしのべて群衆を招く」という言葉で始められ、そして「闇市の雑踏の中に現れたのはイエス・キリストである」と続けた。日本の戦後直後の言葉に尽くしがたい思想的、政治的な混迷と混乱の中から、新聞の発刊を通して「キリスト」の存在と働きを明確に宣言しようとする言葉であった。

 こうして刊行が始められた「キリスト新聞」の特徴は、その取材対象がカトリックを含めてプロテスタント諸教会を包含する超教派であることと、またそれぞれの時代の中で日本社会のみならず世界をも視野に入れて政治、思想、社会、キリスト教学校を含む大学や神学部、そして音楽、演劇、文学、また出版などにもおよぶものであった。

 ひと言で戦後70年というものの、周知のように日本社会そのものの歩みは決して平坦なものではなかった。戦後直後のGHQによる日本の民主主義化の歩み、日本国憲法の制定と共に始まった「信教の自由」や「政教分離」の原則は、日本社会の中で必ずしもその深層において自覚的に認識され確立されたものではなかったがゆえに、独立主権を回復した後においても多くの課題と向き合わなければならなかった。

 「キリスト新聞」創刊後の日本社会は、戦後東西の冷戦構造とその中での原水爆実験、朝鮮戦争の特需による日本の経済の急速な成長、自衛隊による再軍備という荒波にもまれた。そして靖国神社国家護持法案などは1960年代に至るまでの重要な政治課題であり、同時にキリスト教界も正面から向き合わなければならない主題であった。これらに対して「キリスト新聞」が報道してきた意義は大きなものであった。「キリスト新聞」の標語として「平和憲法を護れ、再軍備絶対反対」という標語が掲げられたのは53年9月12日、第351号からで、それは現在まで変わることはない。

 また、キリスト新聞社から毎年発行されている『キリスト教年鑑』の巻頭部分に、それぞれ1年の「記録・写真」が掲載されてきたことも、キリスト新聞社ならではの重要な資料となっている。
 時代が移り、現代においてはIT化の進行と共にメディアそのものが多様化し、また従来のキリスト教教理の解釈だけでは対応が難しい課題が現出している。原発を含む環境問題、ジェンダーやLGBTをめぐる理解、遺伝子工学の進展が生み出す生命倫理。加えて今日、具体的直接的に問われている「平和」と安倍政権の改憲へと向かう動きなどである。

 これらの課題に対して現在のキリスト教会が、どのように問い、答え、そして発言していくかは、関係するすべての者にとって重要な課題である。そしてこの現実の中で、日本のプロテスタント教会を代表する日本キリスト教協議会(NCC)、また日本で最大の教会である日本基督教団の果たすべき使命は極めて大きいと言わざるを得ない。宣教の使命を果たしていくことについて、その視点と議論が内向きであるという認識をぬぐうことができないからである。教会が単に多数決によって淡々とその方向が決められていくのではなく、日本においてともに宣教の課題を担っていくためには、信仰に基づいて真剣な、誠実な、謙虚な、真実な対話が必要であることは論を待たない。教会こそが神の前にあってそのような対話の場を生み出し、そして日本社会の中でキリスト教の立場から協働していくことなしに、これらの使命を果たしていくことはできない。

 その意味で「キリスト新聞」には、もちろんこれまでのように内外のキリスト教に関わる報道をし続けていくことは当然ではあるが、さらに一歩も二歩も踏み込んで、日本のキリスト教界が当面する課題を掘り起こし、担うべき課題に切り込んでいく取材と報道を期待している。

 はら・まこと 1948年福岡県生まれ。同志社大学大学院神学研究科(歴史神学前期課程)修了。博士(神学)。日基教団牧師、同志社大学神学部教授。著書に『キリスト新聞で読む戦後キリスト教史』(キリスト新聞社、2003年)=監修、『国家を超えられなかった教会――十五年戦争下の日本プロテスタント教会』(日本キリスト教団出版局、2005年)、『戦時下のキリスト教――宗教団体法をめぐって』(教文館、2015年)などがある。

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