「レーン先生のオルガン」修復へ 創立120周年迎えた日基教団札幌北光教会 2016年11月26日

 1896年設立の日基教団札幌北光教会(札幌市中央区)が10月で創立120周年を迎えた。記念事業の一環として、同教会のリードオルガン=写真右=が修復されることになった。

 米国エスティ社製(1918年)のこのオルガンは、北海道帝国大学(現北海道大学)予科の米国人英語教師ハロルド・レーンさんの妻ポーリンさんが、20年に札幌組合基督教会(現札幌北光教会)に寄贈したもの。第一次世界大戦時フランス戦線で戦死した前夫ウイリアム・システアさんを記念して、父親のローランド宣教師が遣わされていた同教会に贈られた。

 レーン夫妻=写真下=は41年12月8日、太平洋戦争開戦の日に、北大生宮澤弘幸さんらとともに、軍機保護法違反で特別高等警察に逮捕された。ハロルドさんと宮澤さんは15年、ポーリンさんは12年の懲役刑を科せられた。罪状は軍事機密を探知して外部に漏洩したというもの。その後レーン夫妻は43年に捕虜交換船で米国に送還。戦後再び北大に戻り教職に就いたが、事件については生涯一切語ることはなかった。

 同教会信徒で、教会史編纂委員の相馬述之さんによると、レーン夫妻は同教会に籍を置く信徒だったが、当時の牧師および役員会はこの事実を隠蔽。多くの教会員がこの冤罪事件を知ったのは、半世紀後の91年に故岸本羊一牧師が著した『スキャンダラスな人びと――レーン夫妻スパイ事件と私たち』(新教出版社)を通してだった。

 同オルガンは旧礼拝堂で長く用いられ、会堂新築後の現在でも「レーン先生のオルガン」と呼ばれ親しまれている。損傷が著しく、平和への祈りの象徴として今後も大切に保ち続けたいと、修復費用250万円の献金活動を開始。1カ月で半分の額が寄せられたという。相馬さんは、「背後には、かつて戦争の時代にそれに抗することなく時代に取り込まれた教会の過ちに対する懺悔と、この時だからこそ願う平和への祈りが込められている」と語る。オルガンは長野県須坂市の工房和久井で修復される。

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