【映画評】 『天使にショパンの歌声を』 カナダ・ケベックの自然と文化に浸る 2017年1月21日

 フランス語を公用語とするカナダ東部のケベック州。自然豊かなこの土地で、カトリック修道会の経営する女学校が閉鎖の危機にさらされる。校長のシスターは音楽教育を切り札に生き残りを図るが――。

 映画『天使にショパンの歌声を』(配給=KADOKAWA)は、カトリック系寄宿学校という個別特殊の舞台設定によりながら、社会全体が効率重視の近代化を推し進める中で置き去りにされがちな精神価値に基づく教育の重要性を、穏やかな調べで訴える。物語の軸となるのは、修道院本部から学校の閉鎖を言い渡される校長のオーギュスティーヌと、類稀なピアニストの才能を持つが心を閉ざしている姪のアリス。

 アリスを演じるライサンダー・メナードはモントリオール音楽院の現役学生で、女優としては本作がデビュー作。まだ学生ながらもピアニストとしての技量は、将来カナダを代表する1人となることを嘱望される実力派だ。本編中に登場するショパン「別れの曲」から即興ジャズに至るまで、アリスの演奏場面はすべてが本物であり、この音楽性へのこだわりが映画全編に質実さと迫力をもたらしている。

 寄宿舎生活の中でシスターや女学生たちがまとう衣装のバラエティも見逃せない。映画後半になるとシスターらはスーツ姿となり、学生たちの装いも色鮮やかな私服へと移り変わる。こうした服装の変化により、カトリック中心の権威主義的な空気から革新政党による1960年代の「静かなる革命」への大転換がほのめかされる。

 『天使にラブソングを』に比べ、本作はすべてが対照的とも言える。黒衣に身を包むシスターたちが雪原を歩く光景の静けさ。ショパン、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンなど、本編各所に流れるクラシックの名曲たち。ケベックの自然と文化に心から浸ることのできる作品。(ライター 藤本徹)

©2015-9294-9759 QUEBEC INC. (une filiale de Lyla Films Inc.)

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