〝宗教者は聞き役に徹してこそ〟 WCRP日本委が「災害への備え」協議 2017年2月11日

 環境の変化や集団生活に適応することが難しく、災害時の避難生活において特別な配慮を必要とする自閉症者や発達障がい児者などに対して、宗教界はどのような対応ができるだろうか。宗教者としてのネットワークを生かしながら支援の方法を模索しようと、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(杉谷義純理事長)は1月25日、「宗教者としての災害への備え――災害時に特別な配慮が必要な方々への対応について」をテーマに新春学習会を立正佼成会法輪閣(東京都杉並区)で開催した。約160人が出席した。

 同委員会女性部会(森脇友紀子部会長=カトリック東京大司教区アレルヤ会会長)は東日本大震災後、宮城県気仙沼市本吉で自閉症などの障がい児者をもつ母親によって立ち上げられた団体「本吉絆つながりたい」と交流を深めてきた。

 基調発題を行った東俊裕氏(被災地障害者センターくまもと事務局長、熊本学園大学教授)は、「宗教界がこのような活動をしているとは知らなかった」と話し、障がい者の福祉とのつながりについて、①福祉施設に入所している障がい者、②通所している障がい者、③在宅で福祉サービスを受けている障がい者、④福祉サービスを受けずに在宅で生活している障がい者、という四つのパターンに分類。このうち④の割合が最も多く、物的・人的支援や情報が避難所に集中してしまうため、避難所を利用できない障がい者が「見えない存在」となり、公的支援の網の目からこぼれ落ちる状況にあると解説した。

 熊本地震で被災した障がい者の救援を目的に設立された「被災地障害者センターくまもと」は、障がい者からSOSの電話を受け付けるチラシを熊本市の障がい者4万2千人に郵送。多い時で1日70件の電話相談があり、これまでに500人近い障がい者の相談を受けたという。同氏は「支援の中身が物理的なものであっても、それが大事なのではない。人とのつながりを届けることがわたしたちの仕事」と強調した。

 続けて、NPO法人子育て支援コミュニティプチママン(福島県郡山市)を05年に設立した精神保健福祉士の松尾祐子氏が、東日本大震災後の発達障がい児・身体障がい児への対応事例を報告した。

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 「私たち宗教者はどのように行動するのか」と題したパネルディスカッションでは、中村記子氏(立正佼成会習学部長)をコーディネーターに、河田尚子(アル・アマーナ代表)、力久道臣(善隣教教主)、前島宗甫(日本キリスト教協議会=NCC=元総幹事)の3氏が登壇した。

 女性部会事務局長の河田氏は、宗教施設を避難所として活用する時に、弱い立場に置かれた人々に対する目線を持つ必要があるとし、発達障がい児者への声掛けなど、「宗教者ならではの取り組みをしていけるとよい」と提言。

 熊本震災復興タスクフォース(特別事業部門)メンバーの力久氏は、WCRP日本委員会と新日本宗教団体連合会が共同で熊本地震の被災者を対象に提供しているラジオ番組「こころのハーフタイム」を取り上げ、「宗教者の情報が地元の人に流れることによって、災害時の宗教者の役割を世の中に発信できれば」と期待を寄せた。

 東日本大震災復興タスクフォースメンバーの前島氏は、同震災の避難者が未だ15万人を超え、うち9万人が福島からの避難者であることに注目し、原発の問題にどう関わるかが問われていると主張。原発災害の影響は、心理的・社会的トラウマとして表れ、家族や共同体を破壊しているとし、「復興」はあり得るのかと問い掛けた。また「不安を持つ母親にわたしたちはどう寄り添っていけるのか」と問い、心配することを隠さねばならない母親の気持ちに寄り添いながら、根気よく道を求めていくほかないと語った。

 それに対して河田氏は、「本吉絆つながりたい」との交流から「ただ話を聞いてほしい」と求められたことに言及。前島氏は宗教者の役割の一つとして「傾聴」の重要性を指摘。力久氏も宗教者は聞き役に徹することが必要だと述べた。

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 WCRP日本委員会は同日の第20回理事会、第13回評議員会において、タスクフォースの2017年度事業計画を決定した。

 新たな事業計画として、認定NPO法人難民支援協会と共同でシリア難民を留学生として日本に受け入れること(難民問題タスクフォース)、核兵器禁止条約の交渉に向けた提言ハンドブックを作成すること(核兵器禁止条約タスクフォース)などが発表された。

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