「シゴトは地味だが面白い」 実力編集者が本づくりに注ぐ情熱トーク 銀座・教文館 2017年2月18日

 キリスト教出版販売協会が共同で作ったブックガイド「これだけは読んでおきたいキリスト教書100選」の関連フェアを開催中の教文館(東京都中央区)で2月4日、「シゴトは地味だが面白い」と題するトークイベントが行われた(教文館キリスト教書部主催)。業界で実績のある編集者として、土肥研一(日本キリスト教団出版局)、髙木誠一(教文館出版部)の両氏が登壇。司会は本紙の松谷信司(キリスト新聞社)が務め、編集者になった経緯や「地味にスゴい」仕事内容について紹介しながら、改めてキリスト教書の魅力について語り合った。

〝自分が読みたいと思える本を〟

 一般の出版社での経験を経て転身した土肥氏=写真左下=は、雑誌の編集に携わった後、単行本を担当。最も思い入れのある本として、初めて手掛けた『北国の伝道』(小笠原亮一著)を挙げ、「原稿を読みながら、体の深くから感動が湧き上がってくる。こういう体験は他にない。現代における敬虔さとはこういうことなのではないか」と紹介。同氏はこの本との出会いを機に、神学校で学ぶことを決心したという。

 髙木氏=写真右下=は教文館に勤め始めてちょうど10年目。特に出版されたばかりの『オックスフォードキリスト教辞典』(E・A・リヴィングストン編、木寺廉太訳)から、辞典の魅力について紹介。キリスト教の総合辞典の出版は、2002年の『岩波キリスト教辞典』以来、15年ぶり。

 「例えば『十字軍』の項目で、一般的にはキリスト教が聖地エルサレムをイスラームから奪還するための遠征だと理解されているが、この辞典は、さらに具体的な名前を挙げて、『特にビリー・グラハムのような福音派のキリスト教徒は、……イスラームに対する極度に否定的な態度を取っている』とある。ここまで踏み込んだことを辞典に書くというのは勇気のいることで、これは2013年に出た本だからこそ書けたこと。02年に出た『岩波キリスト教辞典』では書けなかった」と指摘した。

 

 続いて、編集者の仕事をより理解するための10問に各自が回答。

 「そもそも仕事の内容を理解されてない」「他の本の誤字は見つけるのに自分の本のミスは気づかない」「締め切り間近の著者のSNSを監視したことがある」「思い入れがある本が売れるとは限らない」などの問いには両氏とも「〇」と応じた。

 「本はもちろん売れないと困るが、自分が読みたいと思う本を作るようにしている。天才的な書き手の思想や言葉に触れることができる良い仕事」と土肥氏。髙木氏は書き手に望むこととして、「若い牧師たちには新しい言葉をつくり出す勇気を持ってほしい。昔からある信仰の言葉を引き継ぐだけでなく、今を生きる中で分かる言葉が求められている」と語った。

(『100選』フェア開催中のギャラリー・ステラが会場に。厳選された『100冊』が並び、その場で購入できる)

〝信仰生活の実態描く本も〟

 会場からは、手に入りにくいキリスト教書の電子化を求める声や、牧師や神学者だけでなく、信徒の書き手を励まして育ててほしいという要望も聞かれた。

 参加した男性信徒は、「キリスト教に興味のある人が『ふしぎなキリスト教』など一般書の解説を読むと、奇異に感じられ、誤解や偏見が強まる場合もある。信徒の生活や信仰のリアルな実態を描いた本がもっとあれば」と語った。

 一般の出版社に勤務するというクリスチャンの編集者は、「時代の要請がある中で、これまでもキリスト教の企画を提案してきたが、信徒が考えるキリスト教と、ノンクリスチャンから見たキリスト教が想像以上にかい離しており、まずはその溝を埋めることから始めなければならないということを痛感した」と吐露。

 髙木氏は、「『これだけは読んでおきたいキリスト教書100選』のフェアを仏教書のフェアとあわせて開催した池袋のジュンク堂では、仏教書とほぼ同じ冊数の売り上げを記録した。日本は決して宗教性の乏しい国ではない」と応じた。

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