「平和には核兵器ない社会を」 バチカン外務長官ギャラガー大司教来日 2017年2月18日

 今年日本はバチカン(ローマ教皇庁)との国交樹立75周年を迎える。日本政府からの招聘を受け、外務長官(外相に相当)のポール・リチャード・ギャラガー大司教=写真右下=が1月28日に来日、2月3日まで滞在した。

 ギャラガー大司教は28日にカトリック麹町教会(東京都千代田区)で、翌29日にはカトリック関口教会(東京都文京区)でミサをささげた。

 30日には広島を初めて訪問。カトリック幟町教会世界平和記念聖堂(広島市中区)で、前田万葉大司教らとミサを共同司式した後、湯崎英彦広島県知事、松井一実広島市長と面会した。同市長からの教皇フランシスコの広島訪問の要望に対し、ギャラガー大司教は前向きな姿勢を示した。続いて訪れた平和記念公園では原爆死没者慰霊碑に献花し祈りをささげた後、広島平和記念資料館を見学した。

 31日には安倍晋三首相や岸田文雄外相と会談し、両国が平和の探求、核兵器廃絶を重視していることを踏まえ、協力を強化していくことで一致した。

 2月2日には「平和文化の促進」と題し上智大学(東京都千代田区)で講演を行い、約200人が参加した(駐日ローマ法王庁大使館、上智大学共催)=写真左下。

 講演でギャラガー大司教は、平和とは武力の行使ではなく紛争の要因を除去し、人々が一致して実現していくものだと主張。そのために人々は考え方の違いを超え、対話の場を持たなくてはならないとし、「近代社会においてすべての個人、家族、国家は社会に参加する権利を持つ。平和を実現する努力とは、人間の基本に立ち返ることだ」と強調した。

 世界平和の前提条件として「紛争による行方不明者の捜索、失われた財産の回復」を挙げ「それがなされなければ、新たな紛争は起こる」と説いた。その前提条件の実現方法として、核兵器に費やされる資金をそれぞれの国の開発や立て直しに充当する案を示した。

 講演後の記者会見で、シリア内戦の宗教間共存にどう取り組んでいるかという質問には、バチカンは手中に政治的解決を持たないとした上で「関係者が交渉の席に着いて、衝突の解決を見出していくことを促している。すべての市民は自分の土地に住み続ける権利を持っており、それは尊重されるべき」と回答。

 ベトナムや中国など、バチカンが断交している国との関係修復について聞かれると、「ベトナムには定期的にバチカンからの代表者が訪問しており、関係発展に努めている。最近では現地でカトリック司教の任命があり、バチカンにとっても現地のカトリックコミュニティにとっても重要なこととなった。関係修復が期待できる」と答えた。中国については「継続的な話し合いにより両者の信頼関係は構築されてきたが、宗教的議論ができる段階にはない。今後を注視していく」と述べた。

 第二次世界大戦における日本軍の加害行為により、今なお緊張関係をもつ近隣各国との和解の道を問われると、「バチカンは日本政府に過去の行為に対して要求できる立場にないので見解を示すことはできない」と前置きした上で、「バチカンがすべての対立や衝突に対してとる立場は和睦」と指摘。「和睦を進めるためには、真実を調べ許容を持って受け止めることが必要。先の大戦はあまりにも悲惨な戦争であり、解決策の見出せない複雑な問題もある。いくつかの残虐行為があったことの認識下で努力をすべき。各国の指導者は、国同士よりも国民に対して和解を進めていくよう強く促していくことが大切」との見解を示した。

 「日本のカトリック教会が核兵器廃絶に向けてメッセージを発信していることに対してどう思うか」との本紙の質問に対しては、核兵器の問題について日本人が明確な理解と意見を持っていることは、唯一の被爆国として当然のことだと述べ、「平和のために核兵器のない社会は大切。世界のさまざまな紛争や対立を減らしていくことにおいても、核兵器の問題は焦点を当てるにふさわしい。わたしたちは教皇フランシスコのもと、引き続きさまざまな形で学び調査することで関与し続けていきたい」とバチカンの姿勢を明示。「日本のカトリック教会の出した声明も理解している。被爆国ではないわたしたちはそこまでのクリアなビジョンや明確な焦点を持っていないが、日本側からの意見は考慮している。より平和で安定した社会を構築していくためには、引き続きこの問題を考慮していく必要がある」と語った。

 ギャラガー大司教は英リバプール出身。1984年にローマ教皇庁外務省に入省、タンザニアなどの大使館勤務を経て、ブルンジ共和国、グアテマラ、オーストラリア教皇大使を歴任し、2014年より現職。

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