高山右近列福式に1万人 推進委員長 川邨裕明神父に聞く 2017年2月25日

 アンジェロ・アマート枢機卿(教皇代理、ローマ教皇庁列聖省長官)の司式による高山右近の列福式が2月7日、大阪城ホール(大阪市中央区=写真下)で行われ、国内外含む約1万人が参列した。高山右近に所縁ある地域や自治体、子孫、また仏教の関係者も招待された。韓国、ベトナム、フィリピン、ルクセンブルク、ポルトガルなど世界各国から列席者があり、海外の報道陣も見られ、注目の高さがうかがわれた。

 1615年2月3日、キリシタン大名・高山右近はフィリピンのマニラで病没。2015年、没後400年を機に日本カトリック中央協議会は高山右近を福者として認定するようにローマ教皇庁に申請した。列福運動推進委員会委員長の川邨裕明氏(カトリック芦屋教会主任司祭=写真右)に話を聞いた。

 

 

〝「信仰を守る」のは神の力〟

――列福に至る経緯は?
 2010年の春に日本カトリック司教団でユスト高山右近の列聖運動に取り組むことが決まり、同年10月からカトリック大阪教区内に列福運動推進委員会を立ち上げました。大阪教区は八つの地区に分かれているので、そこから各1人、事務局やイベント・アドバイザー、旅行会社や歴史家に加わっていただき、約15人程度で準備を進めてきました。

 当初、「証聖者」として申請しましたが、教皇庁より、高山右近は殉教者としての生き方を示しているので「殉教者として申請してはどうか」とのアドバイスがありました。殉教者の福者認定に奇跡は必要ないのです。しかし、「聖人」に列聖されるためには奇跡が必要になります。今回の列福には、ペトロ岐部や187殉教者の列福運動に20年以上携わり、昨年亡くなられた溝部司教様の調査も功を奏しました。

 「信仰を守る」というのは、自分の力ではどうにもならない、個人の努力を超えたものです。高山右近その人よりも、彼に働いた神の力が凄いなと思います。日本人では、殺されたことではなく、生き抜くことで殉教者となった初めての福者です。

 

――当日は「信教の自由を守る日」でもありました。

 いつの時代も信じることは難しいですね。当時は、仏教からも大きな反発がありました。現代でも、信仰を持っていても公言して生きることが難しい人もいます。時には信仰告白が生きにくさや足枷、十字架になることがあります。

 一方、あれほどまでに信仰を貫いた人もいるということは大きな励みではないでしょうか。同じキリシタンでも黒田官兵衛は秀吉の側で仕え続けました。小西行長は表向き棄教したように見せつつ、領地では信仰を保ちました。高山右近の危機には手を差し伸べています。右近だけが追放されたわけです。

 このことは、信仰の選びにはさまざまな道があるということです。どれが良くて、どれがだめだというように単純なものではありません。大切なことは、互いの道を責め合うのでなく尊重し、認め合って、危険があれば手を差し伸べる精神ではないでしょうか。

――町おこしの話もありますね。

 生誕地・豊能町には日帰り巡礼ツアーを開催して、1年間で約500人の信徒の皆さんと一緒に訪問しました。そのことがきっかけになり、地元の皆さんとの絆も深まり、地元のお祭に教会で参加し、夫婦像建立には除幕式に呼んで頂きました。委員会とは別に右近クラブというボランティアスタッフの会も作り、右近ゆかりの地域の方々にも来ていただいて右近フェスティバルなども開催しました。

 列福式当日は、豊能町から約60人、それ以外にも各地の方々が参列してくださいました。列福運動を6年続けてようやくゆかりの地同士のつながりも生まれつつあります。今後も皆さんとのつながりを深めていきたいと思います。

――高山右近の魅力は?

 生き方を通して殉教したところです。領民のために生きた人であったところ、また大名という地位にいながらもそれを捨てて信仰を選んだ点は深く尊敬しています。列福運動にあたり、調査し知るたびに発見がありました。右近は、今でいう働き盛りのころから、全国各地を転々として、最後は金沢で過ごし、長崎からマニラへと旅立ち、そこで病死しました。

 自分の信仰のゆえに家臣たちの生活は困窮し、家族は苦労します。高山右近の潔さだけではなく、彼の人間としての苦悩葛藤に深く感ずるところがあります。悔しさ、哀しさ、怒りもあったと思うんです。でも、これらを信仰の中で受け止め、祈りの中で昇華していった人だった。茶道を通して、自分のあり方を求道し、信仰を研ぎ澄ませた人でした。彼の信仰の戦いに深い敬意と興味を感じています。

――ありがとうございました。(聞き手 波勢邦生)

      ◆

ユーチューブ動画も2万回超

 当日、ユーチューブの中継配信で列福式を視聴していたカルラ・トロヌ氏(京都大学文学研究科外国人共同研究者)は言う。

 「人数の多さに驚きました。ミサも日本語だけではなくラテン語、英語などさまざまな言語が交互に使われていました。ヨーロッパ、フィリピン、韓国、世界各地からの参加者、また茶の湯や仏教の世界からの代表も出席があったことにも高山右近という人物の複雑さを示していると思いました」

 トロヌ氏は、スペイン出身のキリシタン研究者であり、現在、日本学術振興会の外国人特別研究員として日本の殉教者について研究している。

 ユーチューブの再生回数は約2万5千回を数えている(2月12日時点)。

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