『青年ルター』は臨床学の古典 江口再起氏が牧会者に向けて講演 2017年3月4日

 今を生きる人たちの苦悩と、そこにどのような福音を届けられるのかを探り牧会に活かすことを目的とした「臨床牧会セミナー」が2月6~8日、ルーテル学院大学(東京都三鷹市)で開催された(日本ルーテル神学校主催)。テーマは「時代を生きる苦悩――魂にふれる牧会」。牧会者を対象としたこのセミナーは2014年度から隔年で開催されており、今回が2回目。教派を超え約30人が参加した。

 初日には、「青年ルターと〈こころ〉の問題」と題し、江口再起氏(同大教授)が基調講演。同氏は精神分析家のE・H・エリクソン(1902~1994)による著書『Young Man Luther』(58年)を題材に講演を展開。同書は日本では『青年ルター――精神分析的・歴史的研究』(大沼隆訳、教文館)と題し74年に出版、02~03年には上下巻『青年ルター1、2』(西平直訳、みすず書房)として再販された。

 同氏は著者のエリクソンについて、フロイトの精神分析を具体化し、アイデンティティという言葉を作ったこと、「青年」というテーマを見出したことなどに触れた上で、父親が不明など複雑な生い立ちを説明。結婚後は世間から幸せな家庭を築いたように見られていたが、死後出版された伝記によって彼にはダウン症の三男がおり、その子を生涯施設に預け世間から隠し通していた事実が明らかにされたという。

 江口氏は「青年研究の第一人者として世界的に脚光を浴びていたエリクソンだが、誰にも言えない深い秘密があったからこそ人の心の底に降りていけたのではないか」と指摘。同書は波乱に満ちたルターの生涯を追いながら人間の一生の心の流れを解いており、神学と言うよりは臨床学の古典と言えると主張した。

 7日は、賀来周一(キリスト教カウンセリングセンター=CCC=理事長)、平良愛香(日基教団三・一教会牧師)、松浦薫(日本キリスト教婦人矯風会ステップハウス所長)、松谷信司(キリスト新聞編集長)の4氏が外部講師としてそれぞれ、「自死」「ジェンダー」「ハラスメント」「教会と青年」をテーマに分科会を行った。8日は各分科会で出された問題を分かち合った。

 

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