〝誤解されてきた「テオシス」〟 正教会・西日本主教教区で公開セミナー 2017年4月1日

 日本ハリストス正教会教団西日本主教教区は3月20日、講演会「神に近づく――聖人たちの歩む道」を大阪ハリストス正教会信徒会館(大阪府吹田市)で開催し、各地から約60人が参加した。これは、同教区で行われる定例の公開セミナーで、今回はワシリイ杉村太郎(九州管区副司祭)とイーゴリ清水俊行(神戸市外国語大学教授)の両氏がそれぞれ、「救いとしてのテオシス――人の真の救いとは何か」「『聖人伝』を読もう、祈ろう、生きよう」と題して講演した=写真。

 杉村氏はギリシア語の「テオシス」が、本来キリスト教が共有する普遍的な価値であるにもかかわらず、歴史的に正教会固有の概念のように誤解されている点を指摘。「聖書」も「聖書を読む」「(祈祷文で)祈る」ことも含めてテオシスであり、それは「神の教育的配慮と人間の成長」を示しているとし、「この神が、聖書と祈祷文、祈りと機密を通し、人間と関わる。教会はその手がかりとして与えられている」と解説。

 また、テオシスが「神秘主義」「神化」と訳されがちだが、本来は「神の愛に与り、神の道行に参加すること」だとした上で、「イイスス・ハリストス」の生涯に示された神の愛、人間の創造、「在ろうとして在る」神について語った。

 清水氏は、正教会の伝統で、主教が大斎5週目木曜日の早課に聖人伝を読むことを映像で紹介。写本によって聖人伝に長短があるが、エジプトの聖女マリアが類まれな悔改の深さゆえ、罪人から義人となった例として敬意を持たれていると指摘。

 大斎第1週に読まれる7世紀クレタ主教アンドレ作の「大カノン(規程)」は、旧約聖書の人物を題材に、人がどのように罪を犯してきたのかについて、神の大きな物語と個人の生活を重ね合わせ、罪を犯しやすい人間を悔い改めに導き、神と共に生きる生活に招くものとなっていると解説した。

 現在、ロシア正教会の聖人は5千8人。2000年以降、ソヴィエト連邦時代の迫害の結果、列聖が相次いだ。

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