ユダヤ難民を支援した神戸市民 日本基督教学会近畿支部会で神田健次氏が講演 2017年4月22日

 日本基督教学会は3月27日、関西学院大学(兵庫県西宮市)で近畿支部会を開催した。午前中の研究発表に続き、午後は神田健次氏(関西学院大学教授)=写真=が「ユダヤ難民とキリスト教――ミナト神戸を中心に」と題して講演を行い、コメンテーターとして勝村弘也氏(日本基督教学会理事)が応じた。司会は岩野祐介氏(関西学院大学教授)が務めた。

 神田氏は自身が携わった書籍『ミナト神戸の宗教とコミュニティー』(神戸新聞総合出版センター)以来、杉原千畝だけでなく、神戸市民もユダヤ難民に手を差し伸べていたことを知るようになったと、当時の新聞記事などを提示。当時、神戸市では生活費のないユダヤ難民1千人に対して行政がパンを支給し、市民が家に招き、教会がリンゴを配るなどの交流があったことを指摘した。

 また、中田重治や「きよめ教会」など主流派ではない教会が熱心に支援に励んだ理由について、「日本にはユダヤ教を救済する使命がある」とした中田のキリスト教シオニズムがあったと解説。

 加えて、杉原が発行した通過ビザを延長し、ユダヤ人と日本人の間で起きる問題を調停するために東奔西走した小辻節三の功績を紹介した。小辻は1912年、明治天皇没後、殉死する人々を見たのを機に聖書に触れ、米国で神学博士号を取得。後にユダヤ教に改宗し、現在、遺骨はエルサレムに埋葬されている。

 勝村氏は講演に応じて、1941年に至るまでの欧州とアジアの状況を指摘し、小辻の生涯について解説。小辻がどの程度ユダヤ教を理解していたのか疑問視する声もあると述べた。商品の流通もなく、見知らぬ外国人に食糧を分け与えることなど考えられない時代に、ユダヤ人という未知の人々と交流し、互いに支え合おうとする人々が神戸にいたことは記憶されるべきであり、特定の人物のみを「義人」とすることには注意を促した。

 日本基督教学会第65回学術大会は、9月29日から2日間、ルーテル学院大学(東京都三鷹市)で開催される予定。

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