教会と幼稚園が地域巻き込む企画展 松沢資料館で27日まで「賀川豊彦と松澤村」 2017年5月6日

 賀川豊彦記念松沢資料館(東京都世田谷区)では、5月27日まで特別展「賀川豊彦と松澤村」を開催している=写真下。上北沢桜並木会議、日基教団松沢教会、松沢幼稚園の協力で3月28日から開催中の同展は、宗教者であり社会運動家でもあった賀川豊彦が設立した同教会と同幼稚園の歴史を中心に、上北沢地域の移り変わりを描き出したもの。4月21日時点で地域や近隣教会などから160人以上が来場している。

 同展は、第3回「世田谷地域風景資産」に上北沢地域の「賀川豊彦と松沢の教会・幼稚園・資料館」が選定されたことを記念して企画された。「世田谷地域風景資産」とは、大切にしたい身近な風景を「守り、育て、つくる」ことを目的に、「世田谷区風景づくり条例」に基づいて選定されるもので、第1回(2002年度)36件、第2回(07年度)30件、第3回(13年度)20件が選定された。これまで公園や緑道、神社などが選ばれており、「賀川豊彦と松沢の教会・幼稚園・資料館」はキリスト教関連では初めての選定となった。

 風景資産への応募は、松沢幼稚園の卒園生である上北沢桜並木会議の会員からの要望がきっかけ。同会議は、同じく風景資産に選ばれている上北沢の桜並木の維持保存を目的に活動している。同会議の会員と、松沢教会、松沢幼稚園、松沢資料館のメンバーが集まり、3年にわたって応募のための準備を進めてきた。

 選定後は、風景を守るための活動を続けていくことが条件となっており、「『賀川豊彦と松沢の教会・幼稚園・資料館』風景保全活動委員会」を発足させ、月に1回定例会を開き、植え込みやプランターなどによる美化活動を行っている。同時に、過去の歴史を地域の人々に知ってもらおうと、今回の特別展を企画した。

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 教会と幼稚園が地域と深く結び付いているからこそ実現した今回の特別展。松沢教会会員の杉山恵子さんは、「そもそも賀川先生がここで始めたのが、地域の人たちを巻き込んで教会を作ることだった。地域との関係はそこから始まった」と指摘する。

 賀川は1923年に関東大震災が起こると、神戸から上京し、本所地区で救援活動にあたった。その際に健康状態が悪化したことから松澤村(現在の上北沢)に移住。賀川宅(通称「森の家」)で日曜学校や集会が行われるようになり、31年4月、教会と幼稚園が設立された。

 同展では、上北沢の歴史に始まり、松沢教会と幼稚園の設立から現在までの歴史をたどることができる他、教会と地域との関係や、近隣風景の移り変わりについても知ることができる。「展示には、教会と幼稚園の約90年にわたる縦糸の時の流れがあり、地域社会との関係という横糸の流れがある」と話す松沢幼稚園理事長の今関公雄さん。これまで教会、幼稚園、資料館が共同で活動することはあまりなかったというが、「『風景資産』を機に、皆がつながっていることをもう一度確認できた」。

 松沢幼稚園園長の桾沢(ぐみさわ)明子さんによると、幼稚園は空襲の被害を免れたため、卒園生のアルバムが第1回から現在まですべて残っている。靖国神社の例祭について記された戦時中の保育日誌や、同幼稚園出身の松沢教会会員・荻野祐子さんが所有する70年前の資料なども展示されている。

 また、都立松沢病院の敷地内の発掘調査で出土し、区が所有する「殿竹遺跡」の縄文土器=写真左=なども特別に展示されており、4千年前まで歴史を遡ることができる。賀川が収集していた鳥のはく製の展示もあり、さながら小さな博物館のようだ。

 特別展終了後も風景保全活動委員会の活動は続く。松沢資料館学芸員の杉浦秀典さんは、同展の第2弾の可能性もあると語る。「共同企画での演奏会や講演会なども考えられる。もっと地域の人を巻き込んだ企画も行っていきたい」

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