【伝道宣隊キョウカイジャー+α】 授かった〝いのち〟と共に キョウカイイエロー 2017年7月1日

 全国各地で日夜、キリスト教の伝道 ・牧会のために奮闘努力する7人の牧 師とその仲間たち。実は、牧師という のは世を忍ぶ仮の姿。彼らは「神の国」 から遣わされた伝道宣隊キョウカイジ ャーなのである。実在する現役牧師た ちによるリレーエッセイ、さらにパワ ーアップして爆走中!

「授かった〝いのち〟と共に」

 1月末、世間は某アイドルグループメンバーの結婚宣言に驚いていたが、J事務所のアイドルファン歴が長いわたしたちは、とうに経験済みものだった。担当(推しメン)アイドルJの結婚、そして子どもを持つことも経験した。当初、ファンは驚くし、それによって離れる者もいる。しかし、そんな経験を越えて残ったファンは強い。

 Jはこのほど、めでたく第二子を得たが、Jのファンたちは、我らがJの血を引く待望の長男誕生!と沸き立ち、養育費はわたしたちに任せて、とまで言っている。ファンにとって、Jとその家族はロイヤルファミリーのような存在だ。この「ロイヤルファミリー」の明るい家庭を想像するとき、拝みたくなるとも言っていた。自分にとっての「究極なるもの」を見つけた人は強い。そんなJのGoodNewsに喜ぶ わたしも、実は現在妊娠中である。わたし以上に喜んだのは母だ。Jファンの母が、わたしの出産予定日を聞いた直後、Jの子どもと孫が同級生になると即座に判断し、狂喜乱舞したことは想像に難くない。しかし、女性牧師が妊娠をするということは本当にたいへんだと痛感している。

 まず、教会での説教中、立ち続けることがしんどい。聖壇での説教時は説教台が支えとなるからいいのだが、教会学校(CS)の説教は聖壇下なので支えがない。結果、聖餐台に寄りかかりながらの説教となってしまう。「イエス様、ごめんなさい!」という気持ちでいっぱいだ。そして、説教時に着るスーツが苦しくて仕方がない。マタニティースーツを買うべきか悩むが、次の役員会でまずは相談してみようと思っている。

 礼拝堂の匂いも辛い。わたしは「匂いつわり」があったので、今まで好きだった匂いさえダメになってしまった。信徒の整髪料の匂いや香水の匂い、礼拝堂の花の匂い、愛餐会の食べ物の匂い……。 可能な限り、マスクをして匂いを遠ざけるしかなかった。立っていることは辛いが、主日の牧師は座っていられないものだ。しなきゃいけないことも多いし、座っていたら、あの牧師は座っているだけで動かないなんて思われてしまうんじゃないかと不安になる。信徒に妊娠を伝える前は、やはり人知れず気苦労が多かったりする。

 夏のCSキャンプにも行けなくなってしまった。牧師なのに、夏のキャンプに行かないなんて、申し訳なさすぎる。しかし、現段階で子どもたちはわたしが妊娠中と知らないため、殴る、蹴る、飛びかかる、抱きつく……と容赦がない。回避するのは困難だ。キャンプ中でハイテンションの子どもたちだったら、もっとすごいことになるだろう。キャンプに行かない方がいいと決めてくれたスタッフの判断は正しく、それに甘んじようと思う。

 学校での授業もなかなかしんどい。特に生徒たちが体育の授業後のクラスは最悪である。クラスに充満する制汗剤の匂いや早弁の匂いやらで、もう立っていられなくなる。時々座りつつ、授業を進めるが、座っていると教師の目が自分に届いていないとでも思うの か、雑談が増える。牧師の顔も三度まで、どころか妊娠してからはすぐにイライラするようになり、今まで温厚だったわたしも生徒を叱る回数が増えたように思う。帰り道、自分は牧師として、教師としてこれでいいんだろうかと落ち込む。妊婦は情緒も不安定なのだ。

 でも、妊娠して気づかされたのは、仕事に追われて自分に託された命を疎かにしてはいけないこと。そして、この命を守るために、信徒が手を貸そうとしてくれているのなら、その想いに感謝し、信徒を信頼して、仕事を手放すことだ。 キョウカイイエロー、今日も試行錯誤しながら、託された命と共に歩んでいきます!

キョウカイイエロー
 
黄野美晴(きの・みはる) ノリがよく、歌やダンスが大好きなジャニヲタ系ミーハー牧師。実は男性アイドル好き の腐女子。聖書科教師も兼任。泣き虫 で浪費家。武器:ソーテール・シール ド(ウチワ型の盾)/必殺技:キュリ オス・ロゴス・フォース(ペンライト から光を発する)/弱点:イケメン。 熱しやすく冷めやすい。

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