〝宗教がすべてを解決するという考えもまた危険〟 映画『夜明けの祈り』公開 アンヌ・フォンテーヌ監督インタビュー

――この物語の映画化へと至った経緯をお聞かせください。

 第二次大戦末期のポーランドで活動したフランス人女性医師が残した手記の存在を知り、現地で事の真偽を調べるなかで、修道女達がこうした悲劇を経て信仰にどのような疑問を抱きえたのか、また彼女たちが神に身を捧げるという修道院生活を通じ、暴力によって母親になるという衝撃をどのように乗り越えたのかに興味を持ったことがきっかけでした。

――撮影前、監督ご自身が修道院滞在を経験されたそうですね。

 修道院での生活体験は、とても役に立ちました。家族と離れ神への忠節、キリストへの愛に尽くすという信仰によって結ばれた共同生活がどういうものであるかを感じることができました。聖務日課などがあり、一定のリズムでともに祈りを捧げ、沈黙し、また日々の働きや仕草を真近に観ることを通じて、お互いにどのような存在であろうとしているのかも理解できました。

 それから修道女を撮るうえで非常に大事だと思ったのは、顔の表情でした。というのは修道服に包まれた彼女たちは、顔しか見えないわけですね。ふつうなら体型の変化からわかるはずの妊娠しているか否かすら、修道服を着ていると判別しがたいのです。この経験から映画では、修道女の表情に重点を置くことで、彼女たちの内面の深みが表せれば良いと感じるようになりました。

――雪原の白、修道院建築へ差し込む柔和な陽光など、本作では光の扱い方も印象的でしたね。映像づくりのポイントをお聞かせください。

 光はとても重要でした。というのは光が物事を照らし出し、非常に困難な状況からの出口を見つけ、暴力を超越していくうえでの指標となると考えたからです。撮影監督カロリーヌ・シャンプティとの共同作業を通じて陰翳、つまり光と影の使い分けを重要視しました。具体的には画家ラ・トゥールの描く蝋燭の焔が女性の顔を照らし出す様などを参考とし、太陽の白光へ向かっていくラストにおいて、希望に向かって歩む修道女たちの心を光で表現することに行き着きました。

――70年前を舞台としながらも、本作で描かれるテーマはとても現代的です。ルペンに代表される右傾化や、原理主義の台頭なども顕著な現代における社会と宗教との関わりについて、監督はどのようにお考えですか。

 今日の世界では、本来宗教の下ではあってはならないことが、宗教の名において行われています。そうした不寛容の流れに対し、教皇フランシスコの活動などのように目覚ましいものもありますが、一方で宗教がすべてを解決するという考えもまた危険だと思っています。いつの時代にも、宗教の名において暴力を振るう人がいるということは忘れてはいけません。信仰は人の心をほぐし、慰め、愛を分かち合うことで争いをなくしていこうという働きにつながるものです。

 私はカトリック教育を受けて育ちましたが、現在確たる信仰をもっていません。けれども信仰する人々のことは信じています。この映画を通じてこうした事件が実際にあったことを知り、今日の問題についてあらためて考えるきっかけとなり、そこから修道女たちがどのように希望を見いだしたかを感じとってもらえれば幸いです。

(ライター 藤本徹)

8月5日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開/配給:ロングライド

 

「Ministry」シネマ黙想にて映画評を掲載。

【Ministry】 特集「牧師と司祭の育て方」 34号(2017年8月)

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