【宗教リテラシー向上委員会】 「違い」よりも「一致点」に目を向けて 川島堅二 2017年9月1日

 2017年の今年は宗教改革から500年。さまざまな団体により記念関連行事が企画されているが、注目すべきはやはりルーテル教会とローマ・カトリック教会の動向だろう。

 両教会は1999年10月31日、長年の共同研究の実りとして『義認の教理に関する共同宣言』に調印、さらに2013年には両教会の一致に関する報告書『争いから交わりへ』、そして本年10月31日にはあの歴史的なヴィッテンベルクの城教会で、ルーテル世界連盟とバチカンとの共催による記念礼拝が挙行予定である。

 この世界史的な一連の動きにおける最大のテーマは、これに対応した国内のカトリックとプロテスタントの神学者による共同執筆書『カトリックとプロテスタント――どこが同じで、どこが違うか』(1998年)が象徴しているように、両教会の相違を再認識しつつ、しかし、分裂ではなく一致へというエキュメニズムだが、ここではこの連載の視点「多元的な社会の地面」(前号記事参照)から見えてくるものに注目したい。

 この点で先述の報告書『争いから交わりへ』には注目すべき提案がなされている。それはこの報告書の結び第6章において「エキュメニズムの宣教上の課題」は「社会が宗教に関して多元的になればなるほど」大きくなるとし、その課題を「再考と悔い改め(メタノイア)」の要請としていることである。そして具体的にはルターがユダヤ人に対して行った「悪質で侮辱的な発言」、再洗礼派に対する迫害、農民戦争時のルターによる農民攻撃が指摘されている。

 7月24日、ルーテル教会とローマ・カトリック共同委員会主催で麹町のイグナチオ教会で開催されたルーテル世界連盟元議長ムニブ・ユナン氏の記念講演では、この点に関し、さらに踏み込んだ内容が語られた。
「政治においてもそうですが、教会にも当てはまるわたしたち人間の傾向というのは、一致点より違いを強調してしまうところです」。しかし、「わたしたちを分かつことが何かを考える前に、わたしたちをつなぐものは何かをまず見ていこう」。それには「まずはお互いをよく知ること」、そうすれば「自らのあり方を変えていくことにも前向きになります」。

 そして、宗教改革運動のモットーは「絶えず改革し続ける教会」だが、それは「謙遜への呼びかけ」だとし、さらにその文脈で「他宗教への見方」を変える必要について言及。具体的には反ユダヤ主義への取り組みと共に、今日「世界各地で見受けられるイスラム教徒に対する不当な措置や、イスラム嫌いの感情」への適切な対処の模索だという。

 いわゆるエキュメニズムの課題はキリスト教内の教派の合同一致であり、ユナン氏の講演の中心もこれに尽きるのだが、この発想を他宗教との関係性の課題へと押し広げていくことは考えられないだろうか。すなわち、他宗教に対しても、「違い」よりもむしろ「一致点」に目を向け、「わたしたちを分かつものは何かを考える前に、わたしたちをつなぐものは何かを見ていく」。お互いをよく知るという「謙遜」を身につけること、このことが「改革し続ける教会」の今日における宗教改革として求められている。換言すれば、非キリスト教世界をただ宣教と改宗の対象とみなすのではなく、愛と理解の対象と考えるということである。いずれにせよ、キリスト教徒の数を増やすことを目的とする前世紀的な宣教論からの脱皮が求められていることは間違いない。

 

川島堅二(農村伝道神学校教師)
 かわしま・けんじ 1958年、東京生まれ。東神大大学院、東京大学大学院、ドイツ・キール大学留学。博士(文学)。駒場エデン教会副牧師、相模原南教会牧師、恵泉女学園大学教授・学長・法人理事等を歴任。本年4月より農村伝道神学校教師。専門は宗教哲学、組織神学。最近の研究関心は、宗教多元主義、複数宗教経験、トランスリリジャスライフの実践。

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