【東アジアのリアル】 東アジア諸国の協調と南北問題 松山健作 2017年9月21日

 2017年5月、大韓民国は 国民の絶え間ないろうそくデモの成果により政権交代という夢を実現した。これは国民の一人ひとりが政治に参与した結果である。この新しく誕生した文在寅(ムンジェイン)政権下で韓国キリスト教界は、かつてからの宣教的課題であった南北問題の解決の道を模索している。

 先日、韓国基督教教会協議会(以下、NCCK)の金英柱(キムヨンジュ)総務から話を聞く機会を得た。その際、金総務はたびたび東アジアの平和のために日本のキリスト教界との協調が重要になることを説いていた。すなわち、 それは対北朝鮮との関係を巡る事柄 である。

 日本のニュースでは、北朝鮮に関する内容を目にしない日はない。その内容は、ミサイル発射をはじめとし、核開発、独裁国家としての北朝鮮を描き、必要以上に強調しているようにさえ見える。

 金総務は、NCCKと朝鮮基督教連盟(以下、KCF)との「対話」について言及した。現在韓国の置かれている状況は、日米間の政治的関係に韓国が圧迫され、対話の実現が阻まれているという。

 NCCKは、韓国政府から北朝鮮との対話を実現することを期待されている。それは7月18日に趙明均(チョミョンギュ)統一部長官がNCCKを訪問し、南北間の状況を改善するために金総務と会談したことからもうかがえる。 NCCKの姿勢は、武力によらない、 東アジアの平和を対話によって実現 するところに目的がある。


2016年6月に中国・瀋陽で集まった NCCKとKCFの関係者

 また8月15日にNCCKの和解統一 委員会とKCFとの間で南北共同礼拝が平壌の鳳岫(ぽんす)教会で予定されていた。しかし、南北問題を巡るアメリカとの緊張関係が高まる中、共同礼拝は中止となってしまったことを金総務は嘆いた。

 これら話を聞いて、あるアメリカ人宣教師が、このようなエピソードを話してくれた。彼は「アメリカの教会で日本の状況や韓国の状況は、 ほとんど理解されていない」という。彼がアメリカに帰省した際、教会の信徒からこんなひと言をかけられたという。「今回、日本がオスプレイを買ってくれて、感謝している」

 つまり、アメリカからすれば、北朝鮮をめぐる東アジアの軍事的緊張感は経済的に利益を得ることのできる市場である。金総務は、そのような軍事的経済市場主義のアメリカの立場に憂慮を示した。南北が一刻も早い段階で「対話」を実現することこそがイエス・キリストの平和の実 現への一歩となることに確信を持っているゆえである。

 さらに金総務は、かつての NCCKと日本キリスト教協議会の交流が盛んであったころのことを引き合いに出し、南北間の対話が実現する際に日本のキリスト教界からの協力が最重要であることを強調された。つまり、「南北平和統一」という事柄は、もはや二国間の問題を越え、東アジア諸国の協調と共に実現されねばならないという意味である。

 わたしたちは、いま北朝鮮の核開発・ミサイル発射という報道を目の当たりにしつつも、韓国のキリスト教界から北朝鮮との「対話」について、東アジアの平和の実現へ向けたエキュメニカル運動への参与を求められている。ここで連帯のテーブルにつくかどうかによって、わたしたちの「平和」への思いが試されているのかもしれない。

松山健作
 まつやま・けんさく 1985年、大阪生まれ。関西学院大学神学部卒、同大学院博士前期課 程修了。韓国の延世大学神学科博士課程にて韓国教会史を専攻、ウイリアムス神学館修了。 現在、日本聖公会京都教区聖光教会勤務、同幼稚園園長、『キリスト教文化』(かんよう出版) 編集長、明治学院大学キリスト教研究所協力研究員など。専門は日韓キリスト教関係史。

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