「宗教改革」が問いかける 日本聖書協会「500年」記念ウィーク 2017年10月11日

 日本聖書協会(大宮溥理事長)による「宗教改革500年記念ウィーク『宗教改革が問いかけるもの』」が、9月22日のモンゴル・キューバ聖書支援のためのチャリティーコンサート「Hope&Love」で幕を閉じた。期間中は、ルター訳聖書の展示会、神学者による講演会など、さまざまな企画が催された。18日には、ルターの「宗教改革」に造詣が深いハンス=マルティン・バルト氏(独マールブルク大学名誉教授)を招き、「現代世界における宗教改革の意義」と題した記念講演会を開催。会場の有楽町・朝日ホール(東京都中央区)には約450人が集まった。

〝改革の実現ためらうべきではない〞 ハンス=マルティン・バルト氏が記念講演

バルト氏は、多くの人が宗教をもたない現代において、宗教改革にいかなる意義があるかを分析。ルターの宗教改革の主要要素とは、「聖書」「十字架の神学」「恵み」「全信徒祭司性」「二王国論」だとし、それぞれの特徴について端的に解説した。

 その上で、ルターによる宗教改革の教会的、社会的、文化的影響に触れ、「現代の多元主義、自由主義、世俗主義はルターとプロテスタント宗教改革抜きに説明し尽くせない」と述べた。

 また、現代世界におけるルターの宗教改革の意義について考察。ルターの全信徒祭司性の「互いに助け合い、責任を担い合う」という理念は、キリスト教共同体への助言であるが、政治的な領域にも適用できるとして、国際連合の役割に目を向けた。「自分に対する神の計画を探し求め、『神があなたと共に偉大なことを行われる』ことを信頼しなさい」というルターの言葉は、生活する環境、共同体、社会の中でできることを行うように勧めるものだとして、現代の世俗的世界にも適用可能だと指摘。「ルターの活動が今なお意味を持ち得る点は、改革を始めたルターの勇気」だとし、「限定的な改革であっても実現をためらうべきではない」と訴えた。

 また、同氏が最も問題に感じている点として「キリスト教の中の福音派とリベラル派の間の大きな違い」を挙げ、両派はそれぞれの賜物と能力を結び合わせながら、世に向けて共通の愛の証しを行う努力をすべきだと強調した。

 キリスト者は全信徒祭司性を担う一人として社会の中で責任を担っており、理性と信仰を持って、社会と文化の問題を解決する道を探究すべきだとし、ルターの宗教改革は、自信を持ち、 未来を恐れず、能力を発揮するように人類を招くものだと締めくくった。

 同じ9月18日夕刻に帝国ホテル(東京都千代田区)で行われた「エキュメニカル晩餐会」には、関係者ら約150人が出席。 日本福音ルーテル教会総会議長の立山忠浩氏はあいさつで、「宗 教改革は教会に大きな恵みをもたらす一方、分裂と対立という負の遺産を残した。宗教改革500年を祝う目的は、そうした歴史を、対話の歴史へと転換していくことにある」と述べた。

 続いて江口再起氏(ルーテル学院大学教授)が「贈与の神学者ルター」と題して講演。宗教改革の核心は一方的な「神の恵み」「恩寵」だとし、「神 の恵みを贈与とする生き方」こそが信仰であり、「神からの恵みを受けた者が、隣人へ愛を贈与する側に回る」という「贈与の神学」を提唱したのがルターだったと指摘した。

 また、エキュメニズムの本来の意味は「全人類の共生」であるとし、「希望を見失いそうになる現実を前に、『たとえ明日、世界が滅ぶとしても、わたしは今日リンゴの木を植える』とルターが語った希望こそ、神からの贈与としての信仰」と語った。

 晩餐会には、ヨイド純福音教会担当牧師のイ・ヨンフン氏、韓国基督教放送(CBS)理事長のキム・クンサン氏らが来賓として出席したほか、日本キリスト教協議会(NCC)議長の小橋孝一氏、日本福音同盟(JEA)副理事長の米内宏明氏、日本ペンテコステ協議会(JPC)議長の寺田文雄氏も登壇し、共に祈りを合わせた。

ハンス=マルティン・バルト
1939年ドイツ・ エルランゲン生まれ。エルランゲン、ハイデルベルク、ローマで学ぶ。ギーセン大学宗教学部組織神学教授を経て、1981年からマールブルク大学プロテスタント神学部組織神学・宗教哲学教授(現在は名誉教授)。
1997~2009年、福音主義同盟議長。著書に『教義学世界宗教の文脈における福音主義信仰』『マルティン・ルターの神学』など多数。

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