【東アジアのリアル】 「宗教事務条例」修正が及ぼす家庭教会への影響 遠山 潔 2017年11月1日

 邁進し続ける中国。わたしたちの隣国では今、何が 起ころうとしているのか。2017年は中国にとって大きな分岐点となる可能性がある。「一帯一路」という中国大陸からユーラシアを横断し、ヨーロッパとの陸路及び海路の構築を目指す経済・外交圏構想は、2017年5月に北京で大規模な国際大会を開催することによって本格的に始動し、世界を驚かせた。また、2017年10月には5年に一度行われる中国共産党党大会が開催され、今後の中国の動向に世界の注目が集められている。

 そのような中、9月7日に静かな変化が見られた。2004年に制定、2005年に施行された「宗教事務条例」と呼ばれる条例の修正草案が昨年提出され、李克強(り こくきょう)首相によって署名、2018年2月1日から施行されることになった。この条例によって何が変 わるのか、現時点では誰も何とも言えないのが現況である。

 中国の教会は、政府公認の「三自愛国教会」と、そこに属さない、いわゆる「家庭教会」と呼ばれるものが存在する。一般的には、人民の信教の自由は保障されているが、集会を自由に行うことは制限されていると理解されている。今回正式に署名された改訂条例は、主に後者の「家庭教会」にとって深刻な事態を引き起こす可能性を秘めたものであろうと捉えられている。

 当改訂条例は、集会を行うために当局に登録をすればその権限が保障されると捉えることも可能であろう。しかし、実態はそれほど単純ではなさそうである。今回の改訂条例は教会の礼拝を制限するばかりでなく、「家庭教会」が運営する「職業訓練学校」などの教育面においても多大な影響を及ぼしかねないと懸念されるのである。

 中国の若者は、わたしたちの想像を絶するほどの過酷さと厳しい競争の中に置かれている。進学したいと願っても、なかなか大学に行くことができない。ましてや地方出身者が大都市の有名大学に進学することは、日本の受験戦争レベルの話ではない。経済成長が失速していくと、若者の就職先が狭まれ、彼らは行き場を失いかねない。

 そうした中、「家庭教会」の一部では、若者向けの「職業訓練学校」の運営を1990年代半ばから活発に行ってきた。そして今ではキリスト者が経営する企業ともタイアップして、地方出身の若者たちに就職先を斡旋(あっせん)し、必要な教育を提供するにまで至ったのである=写真(家庭教会の職業訓練学校校舎)。

 

 今後、当改訂条例がどこまで実際に施行されるのか、またどのように解釈され、どのレベルでの取り締まりが行われるのか、来年2月以降、実際に施行されてからでなければ分からない。恐らく地域差が出てくるであろう。字義通り、あるいは、それ以上の解釈で施行される地域もあれば、それほど厳密に施行せず、とりあえずは様子を見るというところも出てくるかもしれない。いずれにしても、中国の教会事情からはますます目が離せなくなるのは間違いない。今後の動向に注目しつつ、兄弟姉妹たちのために祈ることが求められている。

遠山 潔
 とおやま・きよし 1974年千葉生まれ。中国での教会の発展と変遷に興味を持ち、約20年が経過。この間、さまざまな形で中国大陸事情についての研究に携わる。国内外で神学及び中国哲学を学び修士号を取得。現在博士課程在籍中。関心は主に中国の教会事情及び教会の神学発展についての諸問題。趣味は三国志を読むこと。

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