『聖書 新改訳2017』 全体約3万節の9割以上を変更 〝原典に忠実な訳〟に 2017年11月11日

 初版から47年。神の言葉に誤りはないとの立場をとる教会を中心に広く使われてきた「新改訳」聖書の新翻訳『聖書 新改訳2017』が発売された。2003年の第三版による部分的な改訂以来の全面改訂となる。句読点を含め聖書全体約3万節の9割以上を変更。さらに、現段階で最も原典に忠実な訳となるという。お茶の水クリスチャンセンター(東京都千代田区)で10月11日に開かれた発表会では、翻訳編集委員長の津村俊夫(旧約聖書学者、聖書宣教会・聖書神学舎教師)、旧約主任の木内伸嘉(旧約聖書学者、東京基督教大学教授)、新約主任の内田和彦(新約聖書学者)、日本語主任の松本曜(言語学者、神戸大学教授)の各氏が、新訳の意義、変更点、特徴などを解説した。

信仰義認、神への「恐れ」強調
宗教改革500年 プロテスタントの伝統に従って

 新改訳聖書は1960年代、「聖書信仰」運動の高まりと共に「聖書は誤りのない神のことば」と信じる諸教派、諸教会、諸団体の祈りと協力によって設立された「新改訳聖書刊行会」が、翻訳・編集したもの。1970年に初版が刊行され、その後、第2版(78年)で若干の訂正を、第3版(2003年)で差別語・不快語の見直しを中心とした小改訂を行った。
 新翻訳の特徴、改訂の意義を紹介し、本文の見本を収録した小冊子『どう変わる?新しい聖書 新改訳2017』(翻訳・著作:新日本聖書刊行会、発行:いのちのことば社)も頒布されている(http://wlpm.or.jp/actibook/seisyo/)。
 以下、発表会での質疑応答から抜粋して掲載する。

――『新共同訳』『フランシスコ会訳』などとの対比で独自性、特異点について。

津村 (詩8:2、『新共同訳』8:3を例に)「乳飲み子の口に〝よって〟」(新共同訳)、「乳飲み子たちの口を〝通して〟」(新改訳2017)のように、『新共同訳』にはしばしば原文を変えて訳す特徴がある。同箇所のマタイ福音書による引用に関しても、『新共同訳』では原文から離れた言葉が当てはめられているが、新翻訳では新約と旧約の引用の関係において七十人訳を介してどのように変化していったのか再検討し、翻訳に当たった。(ヘブル語原文とギリシャ訳は共に「から」(min, ek)であり、『新改訳2017』は、ヘブル語(oz)をそのまま「御力」と訳した。)

内田 パウロ書簡で用いられている「義と認める」という動詞を、『新共同訳』は「義とする」と訳しているが、『新改訳2017』では、初版から第3版までと同じ「義と認める」という訳を保持した。「義とする」という訳も検討したが、それは、罪人の義認を聖化も含めて考える「義化」というカトリック教会の義認理解につながるように思われる。今年は宗教改革から500年。宗教改革の大切なテーマは、信仰義認である。わたしたちは、プロテスタントの伝統に従い、法廷義認の理解をより明瞭に示す「義と認める」という表現を大事にした。

――『聖書 新改訳2017』の名称について。

津村 第3版の改訂では900節に変更が加えられた。第4版としても間違いではないが、今回は聖書の31166節のうち、9割に変更が加わった。量的にも、全面改訂と称してもおかしくないため、『新改訳2017』とした。英語訳のNIV(新国際訳)にも、「2011」と記していることもあるため、宗教改革500年の節目の「2017」を採用した。

―― 一部、「贖い」を「宥め」に、「公義」を「さばき」と訳しているが、「さばき主」なる神を強調されたように感じた。今回の訳で強調されたことは何か。

津村 さばきの面を強調したというより、聖なる神を恐れるということを強調した。『新共同訳』では、恐れを畏怖の「畏」と訳しているが、『新改訳2017』では神を「恐れる」を維持した。近年、代償的贖罪は昔の考えだとされ、神の愛、慰めが強調され過ぎている。新約学者の中でも、代償的贖罪を拒否する研究者が数多くいるが、聖書は神に対する恐れが必要であることを明言している。原文のキッペルには、従来の「贖い」ではなく、「宥め」という訳を採用した。宥めがクローズアップされて、神のあわれみ、「宥めのささげ物」となってくださったキリストの赦しにこそ意義があるということが強調されたと思う。

――『新改訳2017』の翻訳工程について。

山中直義(新日本聖書刊行会専任研究員) 『新改訳2017』の翻訳にあたり、訳者同士がネット上で議論ができるような専用のプログラムを作成。一つの箇所に20~30通りの訳が挙げられ、画面上に、誰が、いつ、どう訳したか、なぜその訳にしたかが1節(1語)ずつ表示されるほか、単語レベルでの原語研究、並行箇所の比較検討、これまでの議論、議事録、モニターからの意見などをすぐに表示できるようなシステムを介して、訳者が、それぞれの牧師室、研究室で翻訳を進めた。
 34人の訳者のほか、読者モニターが翻訳に参加。句読点だけに集中するような専門の担当者も用意した。『新改訳』第1版が翻訳に8年かかったのに対して、『2017』は、16年前に企画がスタートし、本格的な翻訳が開始されたのは9年前と、これまでよりもかなり時間をかけた翻訳となっている。

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