激変するメディア環境と編集者 「ネット炎上」は現代の「魔女狩り」 2017年11月21日

 キリスト教書に携わる編集者を招き、社会やキリスト教界について率直な提言をしてもらう連続企画「編集者がその本音を語る」の2回目が10月20日、「カフェ・エクレシア」(東京都台東区)で開かれた(日本クリスチャン・アカデミー関東活動センター主催、キリスト新聞社後援)。

 7月の第1回に次ぐ今回は、長年岩波書店で「岩波版旧新約聖書」などの編集に携わり、現在はぷねうま舎の社長として、主に人文書を多く手がける中川和夫氏が、「IT革命の渦のなかで」と題して発言した。

 中川氏は、構造的変動の中にある出版界の現状に触れながら、メディア環境の激変がもたらす意味を編集者の立場から考察。スマートフォンの普及が決定的な変化をもたらしたとし、「活版印刷術による技術革新と『魔女狩り』という集団ヒステリー現象は無縁ではなかった。発信する手段を持たなかった無名の大衆が正義の仮面をかぶって攻撃を集中させるという『ネット炎上』に相似する」と指摘した。

 同氏の実感では、ここ30年のIT革命を経て日本語の文体や用字法が変わったという。最後に、1778年にパリで出版された『文学年報』にある批評の一節「文学は現在、不毛という災厄に見舞われている」を紹介した上で、「決して明るい展望を語ることはできないが、わたしたちにはまだ見えていない新しい人間観や世界観が登場し、今では想像すらできないものがサイバー空間の中に花開くという可能性も否定はできない」と結んだ。

 終了後、岩波書店時代から深い関わりのある月本昭男氏(上智大学教授)を聞き手に質疑が交わされた。同企画では今後もさまざまな出版に携わってきた編集者を講師に招く予定。

 

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