【東アジアのリアル】 韓国内の中国人・中国語礼拝 李 恵源 2017年11月21日

 最近、韓国で頻繁に使われる言葉に「多文化」がある。近代以降、「単一民族」という枠組を固守してきた韓国人にとって、「多文化」は聞きなれない言葉であるばかりか、異質なものであり、拒否したい気持ちをかき立てる言葉であった。しかし、21世紀の韓国にあって「多文化化」や「多国籍化」「国際化」などの現象はこれ以上それに逆らって進むことのできない潮流となっている。

 2016年末の政府統計によれば、在留外国人数は204万9441人となっている。国籍・地域別に見ると、最も多いのは中国人であり、在留外国人中の49.6%を占めており、その数は100万人を超えている。その次に続くのは、ベトナム(7.3%)、米国(6.8%)、タイ(4.9%)であり、日本(2.5%)も10位以内に入っている。

 韓国に中国人が住むようになったのは、もちろん昨日今日のことではなく、非常に長い歴史を有する。しかし、近代的な意味での集団移住が始まったのは、軍隊の反乱を鎮圧するために朝鮮政府が清国に派兵を要請した1882年のことであった。軍隊と共に派遣された40人あまりの商人と一部の軍人が朝鮮半島に残り、居住地を形成したことが、在韓華僑の始まりであった。その後、1930年までにその数は9万人に増加したが、戦争や韓中国交断絶、韓国内に根強くある差別などが原因で華僑数は減り、現在は2万人ほどとなっている。現在の在留中国人数の増加は、1992年の韓中国交樹立以降に「新移民」が急増したことに起因する。

 19世紀および20世紀初めに朝鮮半島に入ってきた中国人の中にはすでにキリスト者であった者たちがいた。その中には、キリスト者だとの理由で家族から迫害を受け、それを避けるために移住してきた者たちもいた。1902年からは、中国人対象の宣教活動を在朝の北米宣教師たちが模索しはじめ、伝道集会の開催や中国語聖書の配布などの活動がなされる中、1912年についに最初の中国人教会が設立された。

 そうして始まった中国人教会は現在、小さき群れではあるが「旅韓中華基督教会」という名称の教団に発展し、現在7カ所(ソウル2カ所、仁川、水原、釜山、大邱、群山)に教会がある。旅韓中華基督教会は、「華僑教会」であるとのアイデンティティをもっているが、華僑数の停滞と新移民の急増を受け、その教会員構成も変
化してきている。

 また、多くの韓国教会が在留中国人を対象にした中国語礼拝を行っており、その数に関しては未だ正確な統計はないが、大部分の大型教会が中国語礼拝を行っていることを勘案すれば、ソウルだけでもその数は数十カ所に上ると推測される。

 中国人教会および中国語礼拝に出席する中国人は、「華僑」「非朝鮮系の中国人新移民」「朝鮮系の中国人新移民」という三つのグループに大別することができる。このことが、現在の在韓中国人教会および中国語礼拝がそれぞれにもつカラーを決定する実質的な要因ともなっている。

 次回以降、機会があれば各教会や礼拝共同体の歴史や現状なども紹介していきたい。

1882年に清が派遣する軍隊が駐屯した地域に建つ駐韓中国大使館

李 恵源
 い・へうぉん 1980年、ドイツ生まれ。延世大学連合神学大学院客員教授、上海大学宗教と中国社会研究所客員研究員。延世大学神学科卒業、香港中文大学大学院修士課程、延世大学大学院博士課程修了。神学博士(教会史)。著書に『義和団と韓国キリスト教』(大韓基督教書会)。

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