アニメ化で話題 神父主役のミステリー『バチカン奇跡調査官』 原作者・藤木稟さんインタビュー 2018年2月11日

 昨年アニメ化され、人気声優の出演でも話題になったシリーズ累計100万部超のミステリー小説『バチカン奇跡調査官』(KADOKAWA、装画:THORES柴本)は、2人の神父・平賀とロベルトが、「奇跡調査官」として各地の教会や修道院を舞台に起こる事件の謎を解き明かしていく物語。信徒のファンも注目する本作の原作者・藤木稟さんに、創作の舞台裏について聞いた。

〝敬虔な気持ち忘れず盲目的にならず〞 作品の根底には自身の宗教観も

――アニメ化に際して「今後の創作に刺激をもらえたら」と語っておられましたが、全話の放送をご覧になって、どんな刺激を得られましたか?
 不思議なことですが、実際に喋り動く登場人物を見ることで、より自分の中で、彼らの造形が、はっきりとしてくるという点で、刺激をもらいました。

――「聖書の文章のどこをどう咀嚼して信仰に至っているんだろう」という疑問も語っておられましたが、これまでの創作活動の中で実際にクリスチャンや教会の関係者にも取材されましたか?
 はい。幾人かさせていただきましたし、神学関係の本を読んだりしました。でもわたし自身が聖書を好きなので、何度(何千回かも……)も読み返し、独自の解釈をしている場合もあります。またバチカン放送局で、教皇聖下のメッセージなどを読んで参考にさせてもらっています。

――この作品に携わってから、キリスト教のイメージは変わりましたか?
 変わらないですね。もともと好きなので、掘り下げていく楽しみが、どんどん湧いてきたぐらいです。

――主人公の平賀とロベルトには実在のモデルがいるのでしょうか?
 残念ながらいません。2人ともわたしの頭の中にいる人物ですが、少し自分とさる友人とのやりとりなどに、彼らの会話が似ているということはあります。

――アメリカで神学を学んだ牧師が、「アメリカにおいてさえクィアに取り上げられがちなカトリックの教義や奇跡・秘蹟について、一般的な好奇心に迎合することなくノーブルさを保ち、しかし堅くならずにフィクションとして世界観を確立しておられる筆致に衝撃を覚えた」と感想を語ってくれました。特に作品化する際に意識された点、注意した点などはございますか?
 神に対して敬虔な気持ちを忘れないけれど、盲目的にならず、客観的に書いていこう。そういう風に思い、自分の描きたいテーマを追求しています。

――サブカル作品がキリスト教をモチーフにすると、どうしてもオカルトチックになりがちですが、エンターテインメント性とリアリティを両立させる秘訣を教えてください。
 エンターテインメントとしての楽しみができる作品でなければならないのですが、根底にはわたしの宗教観というものが流れています。それを汚さないように、書いているという感じです。

――限りなくフィクション的な題材(キャラクター・舞台設計、奇跡そのものの事件など)を取り上げながら、「信仰」の本質を描いている点が多くの読者から支持されていると思います。藤木さんご自身の宗教観、信仰観について教えていただけますか?
 わたしはこの世界に神という存在があることを信じますし、また神様が好きなのです。キリスト教に限らず、どんな神様も好きですが、イエスとブッダは特に好きです。でも、わたし自身は神道なのですよね。キリスト教と神道が似ているところは、どんな罪を犯しても、神に許しを乞えば、清められるという点でしょうか? それと心の持ち方が、「赤き清き心」=幼子のような心、を大切にしているというところですね。わたし自身そうありたいと思っています。

――教会関係者の中にも多くの読者がいることと思います。ひと言メッセージをいただけますか?
 キリスト教に関して、それぞれ信仰というのは解釈が違っていたりしますが、できるだけ真摯に信仰に向かい合って描いていきますので、どうぞよろしくお願いします。

藤木稟
ふじき・りん 大阪府出身。1998年『陀吉尼の紡ぐ糸』でデビュー。ミステリーや伝奇など、多岐にわたるジャンルで活躍する。著書に「バチカン奇跡調査官」シリーズ、「朱雀十五」シリーズ、「陰陽師鬼一法眼」シリーズ、『太古の血脈』など多数。

「バチカン奇跡調査官」シリーズ(本編1~13、短編集1~3)、角川ホラー文庫より好評発売中。次巻『バチカン奇跡調査官ジェヴォーダンの鐘』は4月発売予定。

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