【東アジアのリアル】 韓国基督教教会協議会に新総務就任 松山健作 2017年2月21日

 韓国基督教教会協議会(NCCK)の新総務に、韓国イエス教長老会(統合)牧師の李ホンジョン氏が就任した(2017年11月20日)。東北アジアの軍事的緊張感が高まる中で、いかなる預言者的働きが可能になるか、また韓国の宗教界で最も大きな幅を占める韓国教会をいかにまとめあげられるのかが注目されている。そんな李牧師就任のニュースについて、紹介したい。

 李牧師は、韓国教会の現状を次のように表現した。

 「韓国教会のその素性は、反共産主義と結びついた冷戦意識の奴隷でありました。これを克服することで平和統一、癒しの道へと進むことができるのです。福音の解釈において、イデオロギーが反映されることは仕方のないことですが、イデオロギーが反映された解釈が真理であるとする雰囲気は、危険です」

 李牧師は、公に民族共同体の自由、平和、和解のために献身することを約束した。その上で彼は、担わなければならない二つの十字架があると説く。

 「わたしたちは今日の朝鮮半島と世界の平和のために冷戦と分断を克服することが、わたしたち韓国教会にとって決死の覚悟として背負わなければならない歴史の十字架であるという事実を認識しています。そして今日、この歴史の十字架の背後にこれと深く関連性を持ち、またもう一つの十字架である資本と冷戦に埋没させられた韓国教会の一致と更新と変革の課題に直面しているのです」

 李牧師は、「学軍士官」時代の1980年5月に光州において、遊撃訓練を受け、5月18日に起こった「光州事件」(民主化運動)に遭遇した。

 李牧師は当時、市民に向かって銃口を向ける軍人の姿を見て、冷戦の弊害について苦悩したという。また、自身がいつその戦闘の現場に投げ込まれるか分からないという状況の中で、「銃を捨てて、〝市民軍〟と韓国軍の間に立たなければならない。神さまは、その間におられる」という内面的な声を聞いたという。

 李牧師は、これから市民が主体となる東北アジアの共同安保体制のため、またそれらを実現するための連帯を構築するために尽力するだろう。

 彼はそのような「国家が担い切れない困難な事柄に対し、教会が先頭に立って平和の実現のために働く必要がある」と指摘する。

 また、李牧師は新自由主義経済が歪曲する教会の本質について、教育的訓練をしなければならないという。彼自身の教団で起こっている世襲制問題についても、「教会論について神学的認識が欠如した教会が急成長し、間違った認識が起こってしまった」とし、教会成長に執着することで生まれた所有欲を神学的に克服できていないことが要因であると嘆いた。

 韓国教会のエキュメニカル運動の一翼を担うNCCKの総務が新たに就任したことで、いかなる変化が生じるだろうか。同時に、東北アジアにおける兄弟姉妹として、日本のキリスト教会がいかに連帯し、応答することができるだろうか。わたしたち日本のキリスト教会も韓国教会から刺激を受けることで、国家が担いきれない事柄に対して、平和の実現ために神の宣教の業に参与する共同体へと導かれたいと思う。

松山健作
 まつやま・けんさく 1985年、大阪生まれ。関西学院大学神学部卒、同大学院博士前期課 程修了。韓国の延世大学神学科博士課程にて韓国教会史を専攻、ウイリアムス神学館修了。 現在、日本聖公会京都教区聖光教会勤務、同幼稚園園長、『キリスト教文化』(かんよう出版) 編集長、明治学院大学キリスト教研究所協力研究員など。専門は日韓キリスト教関係史。

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