【置かれた場所は途上国】 フィリピン■中■ 幸福度世界第2位の国 平本 実 2018年2月11日

 1986年のピープル・パワー革命を目の当たりにして、それから何度もフィリピンへ通うようになり、ついには91年から92年にかけて首都マニラの大学に留学をすることになりました。入学したのは、ソーシャルワーカー/地域開発ワーカーの人材養成課程。校舎はプレハブで、先生はジーパンなどラフな格好で講義をし、学生の多くが地域で活動をしていて、現場での仕事の合間を縫って授業に出てくるため、Tシャツにサンダル姿の者もいました。

 「人々の益になる本当の学びは教室の中ではなく、人々が住む地域のその生活の中にあるのだ」“Go to the People”(民衆の中に出ていき、共に生きろ)というスローガンの下、学生たちにもみっちりとフィールド・ワークが課せられていました。

 わたしも半年にわたって市内の歓楽街で働く労働者たちへのHIV/エイズ予防・啓発事業に携わらせてもらいました。加えて休みにはスラムに住む知人宅に泊めてもらったり、南はイスラム教徒、少数民族の住むマレーシア国境近くから北はルソン島山岳部まで旅をしたり、フィリピンの多様性に触れることができました。

 「痛い痛いって言ったら、医者が耳元で『300ペソ、300ペソってささやくのよね』。痛み止めの薬代を出すお金なんてないから我慢しちゃった」、と笑い飛ばすように語ってくれたのはフィールド・ワークで出会った女性。貧しく学歴もないため歓楽街で働く中、妊娠をし、シングル・マザーになる決意をした彼女の笑顔は、その困難な状況にもかかわらず、たくましさすら感じられました。

 毎年行われている「世界幸福度調査」(米国の世論調査会社ギャラップ・インターナショナルとWINによる共同調査)によると、2017年のフィリピンの幸福度は世界第2位だったそうです。同じ調査で日本は25位。物質的、経済的に豊かと言われる日本よりも、経済的に困難が多いフィリピンの人々の方が「幸せ」と感じているのだそうです。フィリピンの貧しい人々に出会うたび、こちらが何かをしてあげるよりも、何か大切なものを教えてもらう経験をします。

ひらもと・みのる 国立フィリピン大学院卒業、明治学院大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修 了後、社会福祉専門学校の教員を経て、2000年1月より社団法人日本キリスト教海外医療協力会のダッカ事務所代表としてバングラデシュへ3年間派遣。その後、国際協力機構(JICA)のインド事務所企画調査員、国際協力機構のキルギス共和国障害者の社会進出促進プロジェクトで専門家として従事。2010年9月、ワールド・ビジョン・ジャパン入団。支援事業部開発事業第2課プログラム・コーディネーター。

(写真提供・協力:ワールド・ビジョン・ジャパン)

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