【伝道宣隊キョウカイジャー+α】 「お前の説教を聞きたい」 キョウカイレッド 2018年3月1日

 「牧人が死んだ」。目を疑った。口にしていたラーメンを思わずカウンターに吹き出しそうになった。箸を持った右手が震え出した。もう一度スマホの画面を見る。高校の時代のクラスメイトたちのグループLINEに確かにそう書かれている。「嘘だろ。嘘であってくれ」と心の中で叫ぶ。その叫びに呼応するように、次々と「嘘だろ?」「マジで???」と同級生らがLINEに投稿している。アキラから葬儀の日程と場所が送られてきた。嘘ではなかった。

 高校の同級生であり、甲子園を目指して共に汗を流した仲間だった。野球の話はもちろん、好きな歌や彼女の話など話題は尽きなかった。試験前は牧人の家に集まり、朝まで文字通りの一夜漬けで一緒に勉強した。未成年のくせに、一緒にタバコを覚え、酒も飲んだ。楽しいこと、悪いこともいっぱいやった。青春の友だった。

 その牧人が死んだ。牧人が死ぬ2カ月前、俺は電話で彼と話していた。お互い忙しくなり、久しぶりの電話だった。「元気か?」と俺が尋ねると「元気じゃないな。お前の説教を一度は聞きに行きたいな」と漏らしていた。牧人は高校時代、唯一のクリスチャンの友人でもあった。

 彼は、高校時代に洗礼を受けた。受洗を一緒に喜んだ。仕事も忙しく、最近は教会からはすっかり離れていたようだった。そんな彼が「説教を聞きたい」と言ったのだ。社交辞令だったかもしれないが、そんな声にも思えなかった。渇いた魂から発せられる声に思えた。ちょっと気になっていた。それが牧人と交わした最後の言葉となってしまった。

 牧人の死を知った時、言いようもない後悔、自責の念に襲われた。彼の声が耳から離れなかった。「お前の説教を聞きたい」。彼を襲った死の力を打ち破るほどの説教が俺にできたのかどうかは分からない。しかし、「説教を聞きたい」と漏らして死んでいった友の声が脳裏から離れなかった。「今度の礼拝に来いよ!」――そう伝えていたら何かが変わったかもしれない。彼のことを気にかけて、もう一度電話をかけていたらもしかしたら違う結果だったかもしれない。自分を責めるのは、傲慢なような気もしたが、何かができたのではないかという思いが何度も頭に浮かび、泣けてきて仕方がなかった。悔しくて、悲しくて、声を上げて泣いた。

 「お前のところに祈りに行こうかな」。大学時代の友人太郎が忘年会の席で俺に言った。突っ込んだ話はできなかったが、とても気になった。牧人の死を思い出した。すぐに友人に「また飲みに行こう」とLINEをした。先日、その太郎と会って話をした。「俺の生きる意味は何か、悩んでいる」と打ち明けてくれた。俺は別に何ができるわけでもない。でも、太郎の存在は、俺にとっては少なく
ともかけがえのない価値ある存在であり、太郎に出会えたことを神に感謝していると伝えた。別れた後、太郎から「心に沁みた。そしてとても嬉しかった。ありがとう」とLINEが来た。

 牧人の死を無駄にしない。身近なところで痛みさまよう魂がある。魂を救い出すキョウカイジャーの戦いは今日も続く。

キョウカイレッド
 赤星雄馬(あかほし・ゆうま) 常に筋トレを欠かさない体育会系アスリート牧師。その体の大きさから態度のデカい奴だと見られるのが悩みの種。大食漢。仁義に厚い。武器:黄金バット/必殺技:み言葉千本ノック/弱点:食欲

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