【宗教リテラシー向上委員会】 「ポケモンGO」で伝道GO 川島堅二 2018年3月1日

 「ポケモン」の多神教的性格を忌避するムスリム、流浪するユダヤ民族との類比を見るユダヤ教徒。では、キリスト教徒はこのゲームに対してどのような反応を示しているだろうか。イスラムの宗教令のような公式見解はないが、一昨年7月「ポケモンGO」が日本でリリースされて迎えた最初の週末(土日)に、教会関係者の間でかなりの数の意見交換がツイッター上でなされた。その内容に基づいて考えてみる。

 教会を含む多くの宗教施設が、このゲームのアイテムを無料入手できる「ポケストップ」や対戦用の「ジム」に設定され、海外ではこうした場所に多くの人が押し寄せトラブル発生という報道がなされていた。教会関係者が神経質になったのも無理はない。わたしが入手した教会関係者のツイートは7月23日(土)、24日(日)の両日で合計554に上った。そのうち、このゲームについて何らかの評価を書いているものは81。これを内容別に「積極的に利用すべき」「節度・マナーを守ってする」「禁止すべき」の三つに分類したところ、過半数の41が「積極的に利用」で、「節度・マナー」(16)、「禁止」(24)を大きく上回る結果となった。いくつか紹介する。

 「明日はぜひポケモンを取りに教会に来てください」「教会にルアー(ポケモンを呼び寄せる有料アイテム)をつけます。よかったら来てください」「ポケモンGOは福音伝道の機会」「教会の認知度アップを期待」などである。積極的意見はプロテスタントに多く、カトリックは「中庭ならよいが聖堂内は禁止」など慎重な意見が比較的多かった。

 数が少ないので、これだけで全体の傾向を判断することはもちろんできない。しかし、伝道に積極的に活用という意見は、イスラム教やユダヤ教からは出ていないので、この傾向はキリスト教、特にプロテスタントの特徴と言えるかもしれない。ちなみにわたしの出席教会(プロテスタント)も「ジム」に設定されているが、これは教会の青年が伝道への活用を願って自発的に申請したものだ。「(教会前にプレイヤーが集まっている時)どのタイミングで教会案内のトラクトを配布するかが課題」と彼は言っている。

 仮にこのゲームを伝道に積極活用するとしたらどのような可能性があるだろうか。まずは場所作り。下足のままで入れる開放的で明るいスペースがいい。エアコンにトイレ、さらに座り心地のよいソファとスマホ充電のための電源があれば完璧だ。

 重要なのが人作りである。「ポケモンGO伝道隊」としてトップレベル(ポケモンの能力を最大限まで引き出せるレベル38以上)のプレイヤーを募る(いなければ養成する)。年齢は20代から60代まで幅広く、できれば男女半々で6名程度、所属チームも赤・黄・青2名ずつとし、訪れたプレイヤーの所属に応じてジム戦に対応。「伝説のポケモン」には総がかりで。レベルアップのたびごとに一緒に喜んであげる。リピーターができ、時には他のジムに一緒に遠征に行けるくらい親しくなることが最初の目標だ。

 これは、ゲーム仲間が見つけにくい地方で効果を発揮する。十分時間をかけて親しくなったら「ポケモンの世界の背景には宗教がある」「聖書を学ぶとポケモンの楽しみも倍増するよ」と言葉巧みに集会へ導く。なんだか某キリスト教系カルトの勧誘に似てきたが、1回のイベントに500人以上の若者を動員するカルトの「伝道」は、これくらい念の入ったものである。違いは宗教団体であることを初めから明かしているかどうか。宗教リテラシーとして、これは最重要事項だ!

かわしま・けんじ
 1958年、東京生まれ。日本基督教団正教師、博士(文学)、東京と神奈川で10年間牧会の後、恵泉女学園大学教授、 学長、法人理事等を歴任。昨年4月より現職。専門は宗教哲学、組織神学。主著『F・シュライアマハーにおける弁証法的思考の形成』。

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