【伝道宣隊キョウカイジャー+α】 X JAPANの神学 キョウカイブラック 2018年4月11日

 俺がロックを始めた理由、それは中学生の時にたまたまつけたテレビでX JAPANを見て衝撃を受けたことによる。髪をおっ立てて、インパクトあるメイクをした男たちが激しくも美しい旋律を奏でている姿に魅了された。ちょうどその時に流れていた曲は「Tears」というバラード曲だった。繰り返されるサビの美しいメロディーと歌詞。“Dry your tears with thelove”――訳してみれば「もう泣かないで、愛があるから……」となろうか。ヴォーカルであるToshlの透き通る声が中学生の俺の心にこだました。

 あの瞬間、なぜ俺はX JAPANに惹かれたのか。20年以上経った今、改めて考えてみた。X JAPANの曲には甘いラブソング、恋人への歌などがまったくない。愛を歌っているように思われる歌詞は多いが、どれ一つとっても深い苦しみの中から紡ぎ出された死生観が表現されているものばかり。つまりX JAPANの曲には、作詞作曲を手がけるYOSHIKIの生きる苦しみが凝縮されているのだ。YOSHIKIは父親を自死で亡くしている。そして、その日から抱え続けている自身の癒されることのない深い悲しみが全身全霊で1曲に注ぎ込まれているのだ。

 「流れる涙を時代の風に重ねて/終わらない悲しみを青い薔薇に変えて/“Dry your tears withlove, dry your teas with love”」――これはYOSHIKI氏から父へのメッセージであるだろうし、そして終わらない悲しみを抱え続けている自分へのメッセージでもあろう。「Tears」の冒頭は「何処に行けばいい貴方と離れて/今は過ぎ去った時間に問い掛けて」と始まる。中学生にして父親を自死で失ってしまったYOSHIKIのいのちの意味を探し求める悲しみの旅。そして自身がまだその悲しみの旅路にいて、まだ希望と将来を見出せていない。そういう真実な魂の叫びがここにある。

 先が見えない、答えが分からない、いのちの意味が分からない、自分が生きていて良いのか分からない……。そうした壮絶な闇の中で、それでも諦めず一筋の光を求めて叫ぶ。ここに俺のロックの原体験があり、そしてそれは今日の俺の神学にもなっている。

 教会や牧師は何だか世間よりも真実を知っているかのように振る舞ってしまっているのではないか。意図せずとも十字架の塔や高い説教壇から、他者に「正しき道」を説き伏せようとしてしまう。そんな結果に無意識のうちになってしまっていることがある。だが、本当の教会、本当の牧師は「正しさ」を知るのではなく、何よりも自らが先に悩む。そして答えを出したり、与えたりするのではない。とにかく生きることに悩み、そこから逃げず、それでも救いを諦めない。そうやって振り絞る説教や奉仕には、救いが宿るのではないだろうか。

 そんな教会を求めるために、最後にX JAPANのテーマ曲「X」の歌詞を届けよう。「錆びついた言葉投げ捨てて/張り裂ける心を解き放て/降りしきる雨に背を向けて/息づく奴らに言葉はない」「X!感じてみろX!叫んでみろX!心燃やせ!」

 X JAPANファンは、ライブで両腕を交差しながらジャンプする(いわゆる「Xジャンプ」)。いつか教会で愛を感じ、叫び、心燃やし、「十字架ジャンプ」ができる日は来るだろうか。その時に、この星の魂は熱く燃え始めるだろう。

キョウカイブラック
 黒田ジョスィ(くろだ・じょすぃ) ロックバンド、カフェなどで教会の常識と敷居を打ち破り、福音を世界に響かせるはみ出し系ロッカー牧師。 キリストこそROCKだと信じてやまない、熱い魂(ハート)の持ち主。教会での働きは意外にも真面目!? 武器:罪人重低音ベース/必殺技:ジーザス・クライスト・ロッケンビーム/弱点:理屈

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