〝教派愛〟は永遠に 「教派擬人化マンガ ピューリたん」最終回記念sonoさんインタビュー 2018年4月11日

 2015年の本紙イースター号に掲載された「予告」が海外まで波及・拡散され、話題沸騰の中、4月11日付から連載がスタートした「教派擬人化マンガピューリたん」。3年目の今号でいよいよ最終回(第60話)を迎えるにあたり、作者のsonoさんに本作に込めた思いなどを振り返ってもらった。

〝歴史への興味から信仰も相対化できた〟
もっと他教派のこと知ってほしい

――足かけ3年になりますが、感想をお願いします。
sono 1年の時から大学生活の間ほとんど描いてきたので、やっぱり長かったですね。よく自分でも続いたなと。始めた当初は、すぐネタ切れになってしまうかなと思ったんですが、調べていくとネタになるようなことがいろいろ見つかってきて、ピューリたんと一緒に勉強してきたという感じ。まさか60回も続くとは思いませんでしたが、描いていて面白かったです。

――連載が始まる前からネットニュースなどで盛り上がっていましたが、苦労したことは?
sono 最初の10回は自分でもうまく描けなかったなというところが多くて、昔と今の絵を比べてみると大分うまくなったと思います。作画のやり方も、パソコンだとうまく線画が描けないので、まずはすべて手書きの原稿をパソコンに取り込んで加工して、描き込みの密度も濃くなるようにしました。3年目に入ったぐらいからコツが分かってきて時間を短縮して描けるようにはなりました。

――概ね好評だったと思いますが、一部批判もありました。
sono 「ピューリたん」が一番話題になったのは連載が始まる前だったんですよね(笑)。「こんな連載が始まるらしい」と海外のメディアにも取り上げられたりして、それを受けてTwitterの一部の方から批判的なことを言われたりしました。まだ描いていない、載ってもいないのに……。ただ、その批判も連載が始まってからはほとんどなくなりましたね。わたしとしては、生半可な気持ちではできないし、常に批判の目にさらされているというのは意識していて、ネーム(下書き)作りも緊張しましたし、なるべくいろいろな教派のことを知りたいと思って本を読んだり、実際に教会に行ったり、あとは歴史を勉強しましたね。わたし自身、歴史学科の所属なので、そういう情報にコミットできる環境にあったのは幸いでした。
 特徴の抜き出し方については気を遣って、なるべくさまざまな面が見えるように描いていたつもりです。この作品をきっかけに、もっと知りたいという気持ちが起こるようなキャラ造形にしていけたらと思って描いていました。例えばルーテルとカトリックは少し雰囲気が近いということを言っても、もともとの枠組みを知らなけれ
ば面白くないわけで。

――あくまでイメージですから、難しいですね。ちなみに作者としての思い入れというか、好きなキャラは?
sono みんな好きなんですが、特に丁寧に描こうと思っていたのは正教会と救世軍ですね。特に正教会は日本での周知度がすごく低くて、その分偏見とかも多いので。例えば暦が違うという話とか。

――毎年、新年の鉄板ネタになっていましたね。無教会も意外に認知度が低いのでは?
sono 大学にいると結構、無教会的な人は見かけるんですが、日常ではなかなかお目にかかれないですね。わたしがピンと来た教派とか、この教派を伝えたいと思う教派から擬人化していったので、本当は主要な教派でも擬人化できていないところが多いんです。本当ならこっちが先だよなと思う部分もあって、「かくれキリシたん」も順番的にはもしかしたらもっと後かもしれない。

――でもキャラとしては立っていますよね。ご自身は「福音派」の教会に所属されていて、登場する各キャラとは違う立場ですよね?
sono 「福音派ちゃん」を出そうと思ったこともなくはないんですけど(笑)、どうキャラ付けていいか分からなくてあきらめました。福音派は実は教派ではないとも言われていて、なかなか微妙な立ち位置で。というのは、わたしの属する教会はもともと単立の教会でアメリカの宣教師の方が設立した教会なので、どこか教派に所属しているわけではなかったのですが、考え方としてはプロテスタント、カルヴァン派寄りの考え方でした。ただ、自分がこういう立ち位置だからこそ、主人公を「ピューリたん」にしたという面もあります。ピューリタンというのは一応、歴史上実際にあった教派の大きなグループではあるけれど、今日これこそがピューリタンというような存在はありません。

――教会内の信徒も意外に知らないですよね。
sono 知らないですね。他教派のことに対して興味関心がないという人も多いと思います。たまに別の教会に行くとちょっと落ち着かないというような話をされることも多いですし、なかなか自分の通い慣れた教会以外に出ていくということはよほどじゃないとできません。そもそも物理的、スケジュール的に他の教会に出席し続けるというのは厳しいし、通わないと良さも分からないというようなところがありますね。

――sonoさんの興味は、もともと教派に対するものだったのでしょうか?
sono もともとは歴史が好きだったので、カトリックとか正教会とか、プロテスタントの中でもいくつか分かれているということぐらいは知っていて、あとは宗教改革史が専攻なので、その辺りにはすごく興味がありました。

――ご自身の信仰の延長線上ではなく、あくまで歴史的な興味から?
sono どちらかと言えばそうですね。クリスチャンホームにありがちですけど、実はそんなに自分の信仰で悩んだりしたことがなくて、そこで生まれたのでそういうものだと受け取るというように、自分の信仰を自然にとらえて生きてきました。それが、カルヴァンを勉強することによって相対化されてきて、神学などにも興味が出てきましたし、教派に違いがあるということも面白く感じられてきました。もしカルヴァンに興味を持っていなかったら、普通にクリスチャンとしてあまり疑問を持たずに生きていたかもしれません。その方が幸せだったかもしれないですが(笑)。

――今後の野望は何かありますか?
sono 今回、最後に「かくれキリシたん」を登場させたのは、カトリックとは少し違った信仰を受け継ぎ続けているということを知って、それも一つの教派として認めてみてはどうかという考え方の一つだったんです。彼のことはカトリックとの関係も含め、無教会など日本の教派の一つとしても描いていきたいなと思っています。

――ありがとうございました。(聞き手 松谷信司)

sono 漫画家。史学科の大学生。日本福音キリスト教会連合(JECA)所属の教会に通うプロテスタント信徒。漫画家志望で、出版社に原稿の持ち込みをしつつネットでイラストを発表していた。2014年の宗教改革記念日に、Twitter上でカウントダウン企画としてルター、カルヴァンなどのイラストを掲載していたところ、キリスト新聞社から「ピューリたん」でデビューすることに。

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