【東アジアのリアル】 太極旗集会と韓国のプロテスタント・ニューライト 李 相勲 2018年4月11日

 韓国において1年の中で最もナショナリズムが高揚する日の一つは、日本の植民地支配からの独立を求めて行われた3・1独立運動を記念する三一節である。今年の三一節には三一節国家回復汎国民大会という名の集会がソウルで開催された。いわゆる太極旗集会である。太極旗集会といえば、朴槿恵大統領の弾劾を求めて2016年末から始まったロウソク集会に対抗し、朴大統領擁護のために開催されたものが日本でも知られていよう。今回の太極旗集会では、従来の集会にも登場していた星条旗に加え、「日の丸」を描いた横断幕も現れ、物議をかもした。

 これまでの一連の太極旗集会では、韓国基督教総連合会(韓基総)など「プロテスタント・ニューライト」と呼ばれる保守的右派のプロテスタント諸団体が、特に集会への大衆動員の面で主要な役割を担ってきた。韓基総は、保守的な牧師たちを中心に反共主義を鮮明にして1989年に結成された団体である。韓基総は、2000年代から大型教会の牧師たちによる積極的な支援のもと、韓国キリスト教界における影響力を拡大させていった。

 韓国における右派と左派(保守と進歩)は、政治的には反共主義、経済的には自由市場経済への態度によって決まる。右派とは反共主義および自由市場経済を支持する人たちであり、左派とは北朝鮮との対話路線を容認し、行き過ぎた自由市場経済に疑義を持つ人たちである。韓国の置かれた状況を考えれば現実的選択であると考えられる対話路線も、右派から見れば、「親北」「北朝鮮への従属」となる。

 プロテスタント・ニューライトがそれ以前の保守的キリスト教グループと一線を画す点は、それが政治的行動主義をとるという点である。それ以前の保守派は、独裁政権下において民主化運動を担い政治・社会的参与をしていたキリスト教グループを「政教分離」を根拠に批判し、自らは政治運動に参与しなかった(実際には、体制に従順であることによって体制維持に協力していた)。

 一方、ニューライトは、1990年代末から政治的な発言を開始し、2000年代に入ってその活動を活発化させていった。2003年の三一節には、反共主義を掲げて10万人以上を集めた集会が開催されたが、その開催にあたっては韓基総などが深く関わった。また、キリスト教政党の結成や保守政権誕生のために奔走し、李明博および朴槿恵政権の成立を後押しした。

 このプロテスタント・ニューライトが活発に活動し始めた時期は、金大中から盧武鉉へと続く進歩的政権の登場時期と一致する。ニューライトにとっては、それら「親北左派政権」は韓国を共産主義化し、その存立を危うくする存在であった。彼らは、自らを共産主義から国を守る愛国者とみなし、その愛国の象徴として太極旗を掲げるのである。

 今年の三一節の太極旗集会では、韓日米間の同盟強化が訴えられ、前述の通り星条旗や「日の丸」が登場した。その根底には、現政権がとる北朝鮮との対話路線ではなく、三国が協力しての強硬路線が必要だとの訴えがあるのであろう。日本の植民地支配への抵抗を象徴する三一節に「日の丸」が登場したことは、プロテスタント・ニューライトを含む韓国の右派が、いかに強い反共主義を保持しているかを象徴的に示しているとも言える。

い・さんふん 1972年京都生れの在日コリアン3世。ニューヨーク・ユニオン神学校修士課程および延世大学博士課程修了、博士(神学)。在日大韓基督教会 総会事務局幹事などを経て、現在、延世大学韓国キリスト教文化研究所専門研究員。専門は宣教学。

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