「日本人の心に届く福音を」 選集完結記念し井上洋治を学ぶ会 2018年6月1日

 日本の文化に根差したキリスト教伝達に生涯をささげたカトリック司祭、井上洋治(1928~2014)の著作選集を、2015年からキリスト教団出版局が刊行してきた。

 今年4月のシリーズの完結を記念し、「風(プネウマ)の家」(山根道公代表=ノートルダム清心女子大学教授)が月曜講座の一環として、「日本におけるイエスの福音の捉え直し――井上洋治『日本人のためのキリスト教入門』をめぐって」と題した講演会を5月21日、カトリック幼きイエス会ニコラ・バレ(東京都千代田区)で開催、約60人が参加した。主催した「風の家」は、日本の風土に福音が根を下ろすことを目指し、井上司祭が1986年に創設。その活動は現在も受け継がれている。

 今回はいずれも「風の家」で学び、現在は講師を務める山根道公代表、若松英輔(批評家)、山本芳久(東京大学准教授)の3氏が登壇。生前の井上司祭をよく知る立場から意見を交わした。

 今回刊行された最終巻『日本人のためのキリスト教入門』について山本氏は、「誰でも入っていける上に、既刊の内容が網羅されている。希少で優良なキリスト教の入門書」と紹介。若松氏は「従来の神学やキリスト教のイメージを一度留保して向き合うと良い本。キリスト教思想と照らし合わせて是非を考えるのは不適切」と語った。山根氏は、「井上司祭は『自分は神学者ではなく宗教者だ』と主張し、苦しんでいる人たちが救われる福音を届けることに情熱を傾けた。司祭が生み出した『南無アッバ(アッバ=父に、南無=帰依する)』という言葉は、仏教が土壌の日本で、キリスト教に魅かれる人たちの日常に合致した」「人間の心の奥底から湧き上がる言葉を届けることに成功した」と述べた。

 「井上司祭は、著作も読めず、ミサに来ることもできない人を常に念頭に置き祈っていた。わたしたちは司祭について語るよりも、その行いを血肉化していかなくてはならない」と若松氏。

 「キリスト教の可能性とは?」という会場からの質問に、若松氏は「さまざまな修道会があるのは、これこそキリスト教という霊性が皆違うから。キリスト教は森のようなもので、咲かせる花々は異なる。キリスト教ではどういうことをしなければならないという答えはない」と回答。

 山本氏は「出エジプト記(3:14)で神がモーセに『わたしはある。わたしはあるという者だ』と答えたように、神は簡単に分かるものではない。キリスト教は、聖書と2千年の文化の融合であり、『わたし』が出会っていかなくてはいけない」と応じた。

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