「史上初」の米朝首脳会談 時はなお流れる 2018年6月14日

 6月12日、シンガポールで会談したドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、双方が署名した共同声明を発表した。「史上初」や「歴史的な首脳会談」を強調したが、焦点だった北朝鮮の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)や、朝鮮戦争の終結への言及はなかった。

 会談の開催を最優先にし、難題を先送りにしているのを見て、「米朝あいまいすぎる合意」(朝日新聞)、「米朝首脳、非核化と北朝鮮の体制保障で合意 具体性に疑問符も」(ロイター)、「トランプ氏『偉業』固執、正恩氏『制裁緩和』狙う」(毎日新聞)、「米朝雪解け、日韓の心境複雑 『体制保証』争点に」(ウォールストリート・ジャーナル)などの見出しを付けて各メディアは報じた。

 しかしいずれも事実(ファクト)を抑えないままに、推測・希望を報じるのでは、首脳会談を「バラエティショー」にしようとした両者の思惑に乗っただけ、というファクトを明示するしかなかった。

 日本にとって最大の関心事である「拉致」についても、明確な進展は伝えられなかった。拉致されたままの被害者も、父母兄弟など関係者も、期待を裏切られながら、時の流れゆくままに置かれたままだ。

 キリスト教世界でも、米朝首脳会談への期待は高かったが、それは満たされなかった。会談では北朝鮮のキリスト教徒についても言及した、とトランプ大統領は語ったが、「言及」の中身は明らかにされないまま。

 バチカン(ローマ教皇庁)も世界教会協議会(WCC)も、落胆を示す言動は避けており、会談を「真に歴史的」「長く困難の多い道のりの始まりにおいて、重要なページを開いた」「より平和で安全な未来に向けた道のりにおいて重要な最初の一歩」などと位置づけ、「両国の首脳に、平和のための対話の道を求め続け、衝突を招く過去のレトリックに逆戻りしてしまう衝動に抵抗するよう求める」などと述べるに留まった。

©朝日新聞

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