「ヘイト本」にどう立ち向かう? BLARメンバー招いて議論 2018年6月22日

 民族差別や排外主義をあおる「ヘイト本」が書店にあふれる中、キリスト教出版業界にできることを考えようと、キリスト教出版販売協会の出版部会(髙橋真人会長=教文館)と販売部会(前山新会長=日本キリスト教団出版局)による差別問題合同例会が6月12日、東京・早稲田の日本基督教団会議室で開催された。「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会(BLAR=BookLovers Against Racism)」から、事務局の岩下結氏(大月書店編集部部長)らを迎え、「ヘイトスピーチ問題を学ぶ」をテーマに、約20人の参加者が議論を深めた。

 2014年に結成されたBLARは、編集者や書店員ら20人ほどのメンバーで構成され、同年『NOヘイト! 出版の製造者責任を考える』(ころから)を出版。「ヘイト本」に対する抗議活動やシンポジウムなどを行ってきた。岩下氏によると、13~14年にかけて室谷克実著『呆韓論』(産経新聞出版)に代表される「ヘイト本」が書店を占拠するようになり、最近でもケント・ギルバート著『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社)など、「ヘイト本」ブームは続いている。購買層は50~60代の男性が中心だが、女性も一定数いるという。

 岩下氏は、差別を「社会の中で特定の属性を持つ集団に対して、排除や不利益をおよぼす目的や効果をもつ行為」と定義した上で、ヘイトスピーチとは「特定の集団に対する偏見に基づく差別・憎悪・暴力を煽動する言動や表現」だと解説。特定の集団に対する偏見は、差別から暴力、ヘイトクライム(憎悪犯罪)、ジェノサイド(集団虐殺)へと発展する危険性があり、ヘイトスピーチにその段階を押し上げる効果があることを強調した。

 また、「ヘイト本」の定義が難しいこと、言論は法律が介入せずに自由にさせれば正しい結論が残るという「言論の自由市場」論や、「言論・出版の自由」との対立などを理由に、「ヘイト本」をめぐる議論が困難であることを指摘。「ヘイト本」を出版する出版社側の倫理を問い、単に差別表現を避ければよいのではなく、特定の属性の人を排除しようとする言説が問題なのだと訴えた。

 さらに、出版業界全体に、性表現を除いて実効性のある倫理規定が存在しないことを指摘し、憲法21条で「出版の自由」が保障されているのは、そこに公共的価値を認めているからであり、「『ヘイト本』を出版することにどこまで公共性があるのか」と問い掛けた。

 参加者によるディスカッションでは、自社に差別的な原稿が持ち込まれた場合の対処法などが話し合われた。教会内にセクシュアルマイノリティに対するヘイトが存在するという指摘や、ヘイトスピーチを止めるためにウェブメディアなどを通して海外の多様な意見にも耳を傾けるべきだとする意見が出された。差別される側の立場の本を出版しても、反論されるほどの影響力を持たないことも指摘され、差別に反対する本の出版点数を増やしていくことが課題として挙げられた。

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