【東アジアのリアル】 平和に向けた南北教会の歩み再び 松山健作 2018年7月21日

 6月末にスイス・ジュネーブにおいて世界教会協議会(WCC)70周年の行事と中央委員会が開催された。朝鮮半島の南北教会指導者らが平和的な雰囲気で共に肩を組み、朝鮮基督教連盟のカン・ミョンチョル委員長のピアノ伴奏のもとで賛美歌を歌う姿が報道された。

 今回、北朝鮮の教会指導者が中央委員会に参加するきっかけとなったのは、WCC中央委員会の招待によるものだそうだ。その中で南北教会指導者が出会う機会が用意され、この記念すべき日を「喜びと踊りの日」と命名したという。

 ジュネーブで集まりを持った南北教会の指導者らは、緊張感漂う張り詰めた雰囲気の中で会談したのではなく、共に「アリラン」「主よ、みもとに近づかん」を歌い踊った。友好的な雰囲気の中、非常に穏やかに交流する姿は、見る人々に感銘を与えた。

共に「アリラン」を歌う南北教会の指導者(Albin Hillert/ WCC)

 中央委員会では、ローマ・カトリック教会の教皇フランシスコが祝辞を述べ、講演を行った。特に南北教会の指導者らと直接握手をし、南北関係において平和が実現することへの期待を示した。

 韓国基督教教会協議会(NCCK)の和解統一委員長であるナ・ヘクジプ牧師は、「北側の代表とは何度となく会談してきたが、シンガポールでの米朝正常会談の後、良い雰囲気で出会うことができたため、朝鮮半島の未来を考え、朝鮮半島の平和の回復とその体制を構築することにおいて、手を合わせて共に祈る時間を持つことができた」と振り返った。

 さらにナ牧師は、今後の動きとして途切れてしまっていた8月15日の南北共同祈祷会の再開や朝鮮半島におけるエキュメニカルフォーラムを北朝鮮で開催する可能性についても言及。これらについては具体化されていないものの、7月末にも実務者レベルでの会談が設けられるという。

 またナ牧師は、対北への人道支援についても言及している。2010年前後から大韓イエス教長老会(合同)は、平壌烽燧(ぽんす)に作られたパン工場へ年間150トンの小麦粉を支援していた。しかし、昨今の対北制裁のために支援は中断し、再び工場を再稼働させ、食べることに苦しむ同胞、特に子どもたちへの支援を積極的に行う必要についても述べ、制裁が緩和される必要性を強調した。

 また韓国基督教教会協議会の総務イ・ホンジョン牧師は、南北教会指導者が手をつなぐことによって、これまで続いてきた冷戦時代の論理と意識を平和共存の論理と意識に転換させるための努力をしなければならないという「板門店プロセス」声明を発表した。この声明では、ただ単に南北教会における民族間の事柄を越えて、東北アジアの平和構築・牽引が掲げられている。

 朝鮮半島における南北教会の問題は、すでに朝鮮半島内だけの問題ではなく、民族、国家を超える課題となっている。このような南北教会から発信されるエキュメニカル運動に日本の教会も積極的に参与することによって、わたしたちは平和を作り出す器となるように招かれているのではないだろうか。

松山健作
 まつやま・けんさく 1985年、大阪生まれ。関西学院大学神学部卒業、同大学院博士前期課程、ウイリアムス神学館、韓国延世大学神学科博士課程修了。現在、日本聖公会京都教区聖光教会勤務、同幼稚園園長、『キリスト教文化』(かんよう出版)編集長、明治学院大学キリスト教研究所協力研究員など。専門は日韓キリスト教関係史。

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