【伝道宣隊キョウカイジャー+α】 ギャンブル依存からの回復 キョウカイレッド 2018年8月11日

 「洗礼を受けないか?」

 礼拝や祈祷会に定期的に顔出すイチローに、礼拝後、昼食を一緒に食べながら声をかけた。「いやいや、わたしなどまだまだ……」と多くの人が答えるのと同じように、イチローはけん制した。一緒にいた何人かが「洗礼はゴールじゃなく、スタートだよ」と背中を押した。次の日、「洗礼の話、受けさせていただきます」とイチローからメールが届いた。

 イチローとの出会いは教会で行われていたある集まりだ。元野宿者、アルコール依存症、生活保護受給者など地域で孤立してしまいやすい人たちの場を作りたいとの思いを与えられた方々に、教会の場所をお貸ししていた。イチローはギャンブル依存症の当事者だった。パチンコとスロットで莫大な借金を抱え、自己破産し、どん底にいる時にその集まりに誘われて参加するようになっていた。

 イチローは「生きづらさ」を抱えていたという。最近になって「発達障害」だと診断されたが、子ども時代からちょっと変わった奴と言われながら育った。学校を卒業した後に就職したが、職場でも人間関係でつまずくことが多かった。自分に自信が持てず、どうやったらうまく生きることができるのか悩んでいた。そんな時に仕事帰りにふらっとパチンコ屋に立ち寄った。ビギナーズ・ラックか、短時間で5万円以上勝った。いいようもない高揚感に満たされた。そこからパチンコ屋に入り浸る日々が始まった。

 初めは仕事帰りによる程度だったが、次第に仕事を休んで通うようになった。負けが込んできても、「絶対に取り返せる」とさらに金をつぎ込んだ。実際に大逆転勝利をおさめることも時々あった。その時の興奮は、まるで世界の支配者になったかのような気分だったという。その興奮は、何百万も負けが込んでいることも忘れさせるほどのものらしい。

 イチローは「依存症は否認の病だ」と言う。アルコール依存症でもギャンブル依存症でも、「自分は依存症ではない」と言い張るのだ。止めようと思えばいつでも止められる。そう豪語しながら、まったく止めることができないのが依存症患者の実態なのだ。

 イチローはどうにも立ち行かなくなり、路上をさまよっていた時、支援者と出会い、依存症から卒業すべく自助グループに通い始めた。その自助グループで依存症回復のプログラムとしてよく使われる「12ステップ」に取り組んだ。「12ステップ」には「自分なりに理解した神」が出てくる。それは自分を超越した「ハイヤーパワー」を意味し、特定の宗教の神を規定するものではないが、キリスト教文化を背景に作られた回復プログラムである。イチローは、「ギャンブルに対して無力であり、思い通りに生きていけなくなったことを認めた」というステップ1から歩みを始め、「自分なりに理解した神」を認め、受け入れた。

 イチローは「12ステップ」に出てくるハイヤーパワーとは誰のことなのかを知りたくて、礼拝や祈祷会に出席するようになった。そして「自分なりに理解した」神とは、イエス・キリストの神であると知った。いま、ギャンブルから卒業して7年が経とうとしている。見失われた一人が神に見出された。大きな喜びが天にある。ハレルヤ!

キョウカイレッド
 赤星雄馬(あかほし・ゆうま) 常に筋トレを欠かさない体育会系アスリート牧師。その体の大きさから態度のデカい奴だと見られるのが悩みの種。大食漢。仁義に厚い。武器:黄金バット/必殺技:み言葉千本ノック/弱点:食欲

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