教会教育の源流たどる 第34回「教会と国家」セミナー 2018年9月11日

 日本基督教団奥羽教区北東地区・岩手地区社会委員会は8月20~21日、「教会と国家」セミナーを岩手県盛岡市のユートランド姫神で開催し、15教会から32人が参加した。講師は比企(ひき)敦子氏(日本キリスト教協議会=NCC=教育部総主事、日本基督教団紅葉坂教会員)、主題は「天皇制と教会教育――その底流にある軋轢」。

 開会礼拝を担当した松浦祐介氏(日本基督教団下ノ橋教会牧師)は、フィリピの信徒への手紙、(4:2~11)から「『広い心』とは『平和に参与する心』と定義されるが、計り知れない広い心を誰にどう向けるのかが問われる」と語った。

 講演Ⅰ「日本日曜学校協会(NSSA)の歩みを通して」で比企氏は、設立110年にあたる昨年開設された「平和教育資料センター」の歴史資料を紹介。教会は1873年の切支丹高札撤去を好機としたが、大日本帝国憲法を遵守し、NSSAも「聖書」と「教育勅語」の並列に疑問視することなく宮城遥拝を続けた。1920年の第8回世界日曜学校大会は国家的一大イベントであった。政財界や宮内省の支援を得た流れは、やがて大政翼賛体制に組み込まれ皇国教育・戦争協力へと向かった。戦後、NCCに改組され新スタートを切り、100周年となった2007年、「過去の罪責の悔い改めと新しい時代への決意」が表明されるに至る歴史をたどった。

 講演Ⅱ「日本会議・歴史修正主義の源流を探る」では、1930年に成立した旧「生長の家」を源流とした宗教集団に戦後神社本庁他が加わったこと、「生命の実相」誌には「皇恩に報いよ」などの箇所があること、現在の「生長の家」は政治的な活動から撤退しているが、その思想は超国家主義的主張を信奉する原理主義グループに受け継がれたこと、「占領憲法の無効宣言」と「明治憲法の復元宣言」は「改憲」よりも容易で内的闘争を回避しやすいとし、独自の運動を展開したことなどを指摘。この流れをくむ「日本青年協議会」が「日本会議」「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などの結成に関与し、元号法制定を皮切りに国旗国歌法、改「正」教育基本法、道徳の教科化を成立させたことを強調した。

 2日目の「聖書の学び」では戸舘亜輝男氏(日本基督教団七戸教会員)が、「教会と国家」について発題(マタイ25:31~46ほか)。「国家は、真理に対して、局外者」であり、「正しい自由」が失われる時、教会は市民共同体に対する責任を担うものとして存在するものであると訴えた。教会教育の源流と国家との軋轢の背景を知る集会となった。(報告・折野宏一=日本基督教団三本木教会員)

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