【東アジアのリアル】 多文化化する韓国社会とキリスト教 李 相勲 2018年10月1日

 長らく単一民族国家観を維持してきた韓国社会の多文化化が進行している。2017年の政府統計によれば、韓国の総人口は約5142万人であり、その約2.9%にあたる約148万人が外国籍住民であった。総人口に占める外国籍住民の割合は、今後さらに高まっていくことが予測されている。

 韓国における外国籍住民増加の要因は、主に二つある。一つは、外国人労働者の増加であり、もう一つは国際結婚による移住者(特に女性)の増加である。韓国では経済成長が進む中、1990年代から、いわゆる3K業種における労働力不足を補うため積極的な外国人労働者の受け入れが開始され、多くの外国人労働者が韓国で労働に従事するようになった。

 同じく1990年代以降、農村男性と結婚し移住する女性たちを中心に結婚移住者が増え、2017年末の統計では、国際結婚による移住者は約27万6800人となっている。韓国ではこのような異なる文化的背景をもつ人たちによって形成された家庭を「多文化家族」と呼ぶが、当然ながら国際結婚の増加とともに多文化家族も増えている。このような中、政府も2006年から社会の多文化化に対応するための政策を開始し、各地に多文化家族支援センターなどを設立していった。

 このような政府による多文化政策が開始されるまで外国籍住民を支える活動を行ってきたのは、主にキリスト教団体であった。現在でも多くのキリスト教団体(宣教機関、移住民教会、教会の一部署など)が外国籍住民に対する宣教活動を行っている。2012年から13年にかけて行われた主にプロテスタントを対象にした調査によれば、外国籍住民を対象にした宣教活動を展開している団体は、把握できるだけでも270団体を数えた。この他、カトリック教会もさまざまな形の活動を展開している。

 活動内容としては、各言語による礼拝、社会適応のための文化教室やハングル教室、医療や保育などの福祉事業、労働相談や人権尊重に向けた制度改善運動などがある。外国人労働者をめぐる労働環境および法制度は徐々に改善されてきてはいるが、現在も多くの外国人労働者が劣悪な労働環境や暴力、差別・蔑視に苦しんでいるのが実情である。そのため労働相談および制度改善運動が必要とされているのである。

 どのような目的をもつのかによってその団体の活動内容も決まってくるが、目的別に見た場合、伝道を重視する団体、社会福祉や人権保護など人道的側面を重視する団体、これら二つを両立させるホリスティックな宣教活動を目指す団体の三つに各団体を分けることができる。この三つ目のホリスティックな宣教活動を展開する団体としては、「地球村愛の分かち合い」がある。

 この団体は、1992年に外国人労働者向けの労働相談から始まったNGOであるが、その後、徐々に事業を拡大させていき、現在では中国語やベトナム語、ロシア語などによる礼拝、制度改善運動、ハングルおよびコンピュータ教室、インターネット放送局を通しての生活・法律関連情報の提供(15カ国語)、無料診療、保育・学童事業、多文化家族小学生のフリースクールなど、その活動が
多岐にわたっている。

 今後とも韓国においては、社会の多文化化が進む中、外国籍住民に対する宣教活動がますますその重要性を増していくことであろう。

い・さんふん 1972年京都生れの在日コリアン3世。ニューヨーク・ユニオン神学校修士課程および延世大学博士課程修了、博士(神学)。在日大韓基督教会 総会事務局幹事などを経て、現在、延世大学韓国キリスト教文化研究所専門研究員。専門は宣教学。

連載一覧ページへ

連載の最新記事一覧

TO TOP