北海道胆振東部地震 自然の猛威 被災相次ぐ 報告・岩村義雄 2018年10月1日

 大阪北部地震、西日本豪雨に続き、今度は震度7の地震が北の大地を襲った。自然の猛威に翻弄された夏。岡山県倉敷市での炊き出しに続き、地震発生直後の9月9日から新千歳空港経由で厚真町、苫小牧市に赴いた神戸国際支縁機構理事長の岩村義雄氏による報告を掲載する。

〝成長路線より民のいのち、暮らし〟
経済至上主義への警鐘

 北海道庁のまとめによりますと、9月7日現在で、北海道内の113市町村で合わせて768カ所の避難所に7339人が避難されているということでした。土砂崩れや液状化現象、北海道全土に及ぶ停電は深刻な被害をもたらしていました。停電は解消されても、40時間近く電気が使えなかったことは、酪農にとって致命的でした。

 北海道だけでなく、同時に台風21号の影響で阪神間も停電の打撃を受けました。調理、風呂、トイレも使用できなくなったり、冷蔵庫の食料が腐敗してしまったのです。スマホの充電もできませんから安否確認のツールが役に立たなくなりました。

 地震の被害の大きかった場所は経済大国の日本最大の拠点でした。苫小牧市には、日本で最も広い工業開発面積1万2650ヘクタールの苫小牧東部(苫東)があります。紙、パルプ工業も突出しています。王子製紙の苫小牧工場は、全国の新聞の紙の約3割を生産しています。石油精製、化学、自動車など、多種多様な企業が林立する港湾産業都市です。流通面でも、国際拠点港湾である苫小牧港と、新千歳空港を有しています。

 海外にいますと、日本の工業力は一目も二目をおかれています。しかし、ここ数年は東南アジア、中東などで、目にする新聞、雑誌、報道記事には、JAPANが扱われる回数は減少しています。一方、CHINA、KOREA、INDIAの企業、インフラ輸出、プロジェクトの記事が目立つようになっています。栄枯盛衰なのか、日本円の価値も威力がなくなってきたことは海外旅行者にとって肌身に染みてきています。日本の政権はかつての栄光が忘れがたく、今でも右肩上がりの経済成長へと夢を追い続ける姿が痛々しく映ります。本当の豊かさは何なのか、自問するのは筆者だけではありません。

 今回、日本の経済至上主義の息の根を止める惨事が苫東を揺り動かしました。もう成長路線を追い求めることより、少し立ち止まって、民の幸せ、暮らし、人権を考えましょう、と気づかせるシグナルであったのではないかと気づかせられます。

 厚真町役場で近藤泰行副町長と面談の後、激甚地の桜丘、吉野を訪問。桜丘の家、車、納屋などは土砂に埋没しています。吉野町の山の反対斜面の所有者、今多俊和さん(83歳)は現在、農地で野菜を栽培しておられますが、生まれ育った地域の損壊に心を痛めておられます。厚真町吉野地区で、道内の犠牲者41人の内大半が土砂の下敷きになられました。報道関係者は役場で情報をとると、一斉に吉野地区に集結し、映像を撮ることに専念しました。ですから、吉野地区の裏側、桜丘地区にある悲惨な手つかずの家屋には見向きもしていません。行政が把握していない吉野地区以外に悲劇はたくさんあるのです。熊本・大分地震の時も益城町ばかり報道され、少しでも離れた場所は記者たちがほとんど足を運んでいませんでした。

 桜丘地区でも中田一生さん(76歳)が亡くなられました。激甚地ということで、岡山県倉敷市真備町と同じように、災害救援法によって満額300万円がもらえるかどうかは誰も分かりません。しかし、300万円で家屋の解体費用、車両を賄い、再建せよ、あとは自己責任ではあまりにも無慈悲な仕打ちではありませんか。国が被災者の苦痛を「共感」せず、オリンピック、リニア、大阪万博などぜいたくを追求する時ではありません。

 キリスト者がもつ福音とは、被災し、財産、家屋、所有物を失った貧しい人々が対象です。「目の見えない人は見え、足の不自由な人は歩き、重い皮膚病を患っている人は清くなり、耳の聞こえない人は聞こえ、死者は生き返り、貧しい人は福音を告げ知らされている」(マタイ11:5)。「貧しい人は福音を告げ知らされている」を『日本正教会訳』は「貧者は福音す」と訳出しています。

 被災者、つまり貧しい人の中でこそ、「福音」が生きています。「見失った銀貨」「一匹の子羊」を大切にする神の恩寵を分かち合う日本に脱皮することを願います。

 今年2018年は自然災害の多い年です。6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、8月の猛暑に続き、9月に入り台風21号の襲来、続いて北海道胆振東部地震です。日本が生き残るためには、骨太の価値観の変更が求められています。技術、経済、軍需至上主義ではなく、「田・山・湾の復活」です。里山・田園・里海を見直すべきではないでしょうか。「あなたがたはこの世に倣ってはなりません。むしろ、心を新たにして自分を変えていただき、何が神の御心であるか、何が善いことで、神に喜ばれ、また完全なことであるかをわきまえるようになりなさい」(ローマ12:2)の「変え」る、つまり変革する時に目覚めなければなりません。「変える」(ギリシア語「メタモルフォー」)は外観だけでなく、目に見えない土壌、大気、地下水などの水脈を根本的に変革しなければなりません。つまり、蝶の幼虫がさなぎ、蝶へと完全に変わるように日本列島の自然を復活させるべきです。

 災害救助は自衛隊、社会福祉協議会、ボラセンに委ねるのではなく、無償、自主、対話性を中心とするボランティア道も開かれる転換点です。2300億円もイージス・アショア(陸上配備型ミサイル迎撃システム)のための予算を組むより、民のいのち、暮らし、人権を守る国になりますように。(神戸国際支縁機構理事長・岩村義雄)

 北海道胆振東部地震の救援金は「北海道」と明記の上、郵便振替00900-8-58077「一般社団法人神戸国際支縁機構」または三菱東京UFJ銀行462(三宮支店)普通3169863「神戸国際支縁機構岩村義雄」まで。同機構は助成を得ず、支援者からの寄付で高速料金、宿泊費などすべてをまかなっており、救援金は全額、被災地へ届けられる。

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