映画『パウロ~愛と赦しの物語~』トークショーに松任谷正隆さん 今でも夫婦で「食前の祈り」 2018年11月7日

 皇帝ネロの迫害下、獄中にいたパウロと彼の言葉を書き記した福音記者ルカ、そしてローマに住むキリスト教徒たちを描いた映画『パウロ~愛と赦しの物語~』が、11月3日、初日を迎えた。

 ヒューマントラストシネマ渋谷では、初回10時の上映を前に多くの人々が映画館に詰めかけた。満席となった同館では、上映後、音楽プロデューサーの松任谷正隆さんとビサイドチャーチ東京牧師の波多康さんによるトークショーが行われた。

 松任谷さんは、すでに2回映画を見ており、そのうち1回はシンガーソングライターで妻の「ユーミン」こと松任谷由実さんと共に鑑賞したという。

 「僕はキリスト教徒ではありません。この映画についてもどうせ啓蒙的なものだろうという先入観もあったし、実際いくつかのシーンでは悪態をつきながら観ました。あり得ないだろうと。しかし、いくつかのシーンでは不覚にも涙を流してしまった。観終わった時には感動さえしてしまったのです」とコメントを寄せている。

結婚時のエピソードを語る正隆さん

 由実さんは立教女学院中学・高等学校出身。いわゆる「ミッション系」の出身者であり、キリスト教については、独自の目線で受け入れているという。一方、正隆さんも結婚式を教会で挙げたことから、4回ほど結婚のためのセミナーを受けたのだという。

 その時のことを「辛かった」と振り返りつつも、今でも夫婦で食前にお祈りをすると打ち明けた。自宅にお手伝いに来ている外国人の女性はクリスチャンで、共に英語で祈る時もあるとのエピソードも披露。

 「(二人とも)どこかそういう気持ちがあるのでしょうね。しかし、彼女の中の『クリスチャン像』ってかなりいい加減だと思いますけど」

 正隆さんが映画に求めるものは「何らかのリアリティ」。キリスト教にとって、「奇跡」はとても大切なものだと理解しながらも、映画の中で描かれている奇跡については、「こんなことが起きるはずがない」と悪態をつきながら見ていたのだという。しかし、迫害を受けたキリスト教徒たちが、処刑される前に皆で主の祈りを唱えている姿には、「これは、我が家で食事の前に交わす祈りと一緒だ」とリアリティを感じたと話す。あの映画で描かれていた時代から信仰が今も続いている「リアリティ」は、正隆さんにとって、あまりにも衝撃的だったようだ。

 「例えば日本の時代劇で、リアリティはどこにあるか考えた時に、刀はたぶんリアルかもしれません。でも、そこに教えがあったり、それが今も脈々と語り継がれているという事実はない。でも、聖書は違う。日本にも波多さんのような牧師さんがいる。リアルですよね」

 また、「不覚にも涙を流した」シーンの一つは、パウロが天に召され、天国である人物と再会するシーンだった。

 「あれって、イエス様ですよね?」と尋ねると、波多さんは「それはそうでしょう。あれが、どこかの知らないおじさんだったら、何の映画だという話になる」と応じた。

 松任谷正隆さんと波多さんとの出会いは、数年前に由実さんが都内のホテルでクリスマスのイベントを企画した時。プロデュースをしていた正隆さんは、「クリスマスはデートをする日じゃない。本当の厳かなクリスマスをやりたかったんです。クリスマスには祈りがあって賛美歌があって、聖書の話を聞く時でしょう」と、波多さんに協力を依頼したのだ。

牧師として松任谷由実さんのクリスマスイベントに協力した波多さん

 最後に「自分の中にも『無宗教』と言いながら、どこか神様の存在を都合のいいように信じている自分もいる。信じていないと、やっていけないという時もあると思います。そういうことの必要性のようなものを、この映画を通して感じました。もうすぐクリスマスです。敬虔な気持ちを持ってクリスマスを迎えたい」と締めくくった。

 映画は、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国で順次公開中。

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